
「退職金は退職所得控除があるから、税金はほとんどかからない」——そう思っていたら、iDeCoの一時金を先に受け取っていたせいで、控除が大きく減っていた。そんなケースが実際にある。
原因は、iDeCo(確定拠出年金)・会社の退職金・小規模企業共済を近い時期に受け取ると、勤続年数の「重複」が調整され、控除額が減らされる仕組みがあるからだ。しかも2026年1月1日から、この調整の対象になる期間が延びた。
このツールでは、退職金・iDeCo・小規模企業共済の3つについて、受け取る年・額・加入(勤続)年数を入力すると、控除額がどう調整されるかを概算できる。個人事業主・中小企業の経営者で小規模企業共済に加入している方にも対応した。
退職金×iDeCo×小規模企業共済 退職所得控除シミュレーター
2026年1月1日以後の新ルールで計算。使わない項目は0のままでOK(2つだけの入力にも対応)
① 会社の退職金
② iDeCo一時金
③ 小規模企業共済
小規模企業共済を使わない場合は①②だけ入力すればOK(従来と同じ2択の計算になる)
なぜ「間隔」が重要なのか
iDeCoの一時金・会社の退職金・小規模企業共済は、いずれも「退職所得」として税制上優遇されている。ただし、同じ勤続・加入期間に対して二重に控除を受けられるわけではない。
先にiDeCoの一時金を受け取り、その後に会社の退職金や小規模企業共済を受け取る場合、2026年1月1日以後は「前年以前9年以内」(受け取る年の差でいうと9年以内=差10年未満)に受け取っていると、後から受け取る側の勤続年数から重複分が差し引かれる。2025年12月31日までは「前年以前4年以内(差5年未満)」だったので、実質的に条件が厳しくなった。
逆に、会社の退職金や小規模企業共済を先に受け取り、その後にiDeCoの一時金を受け取る場合は、「前年以前19年以内(差20年未満)」という基準は変わっていない。
見落とされがちなのが、iDeCoが絡まない組み合わせだ。会社の退職金と小規模企業共済のように、どちらもiDeCo以外の退職手当等どうしの場合は、2026年の改正の対象外で、従来どおり「前年以前4年以内(差5年未満)」という短い期間のままになる。個人事業主・中小企業の経営者が、退職金と小規模企業共済の両方を受け取る予定なら、この5年という短いルールを知らずに時期を決めてしまうケースが起きやすい。
受け取り方を考えるときの注意点
- iDeCoを先に受け取る予定なら、会社の退職金・小規模企業共済まで10年以上空けると、両方の控除を満額使いやすい
- 60歳でiDeCoを受け取り、65歳で退職金というケースは、2025年までの「5年未満」では重複調整の対象外だったが、2026年以後は「10年未満」が対象となるため、重複調整の対象になる
- 会社の退職金や小規模企業共済を先に受け取る場合、iDeCoの一時金との間隔を十分に空けることで重複調整を避けられる可能性がある。ただし、iDeCoの老齢給付金には受給開始時期の上限があるため、単純に「20年空ければよい」とは限らない
- 会社の退職金と小規模企業共済の組み合わせは、間隔がわずか5年未満で重複調整の対象になる。個人事業主・経営者は特にここに注意したい
- 同じ年に複数を受け取る場合は、それらを合算し、勤続期間等をもとに計算した一つの退職所得控除を適用する。まとまった額を受け取る場合は、受け取る年や順番によって税負担が変わる可能性がある
- ここまでは60歳定年を例にしているが、早期退職・希望退職で50代のうちに退職金を受け取る人は特に注意したい。「自分は何歳で受け取るか」を実際の年で当てはめて確認するのが確実
参考にした情報
- 国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」
- 東京国税局 文書回答事例「前の退職手当等が同一年に複数ある場合の退職所得控除額の計算の特例について」
- 令和7年度税制改正大綱(退職所得控除額の調整規定の見直し・2026年1月1日施行)
- 大和証券 ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.340「退職金とiDeCo一時金/同じ年に受け取るとき」(2025年1月17日)
※本ツールは一般的なケースの概算であり、個別の税務相談・申告代理には対応していない。確定申告・具体的な控除額の判定は税務署または税理士に確認すること。
受け取る順番と時期、一緒に設計しませんか
iDeCo・退職金・小規模企業共済、どれを先に・何年空けて受け取るかで、手取り額は大きく変わります。ご自身の年齢や制度の加入状況に合わせて、最適な受け取り方を一緒に考えます。