キャッツカードが届いたら保険はアウト?怪盗キャッツ・アイで学ぶ「告知義務」と盗難リスク【空想おかねシリーズ】
キャッツカードが届いた博物館は、その後で保険に入れるのか?
夜の街にネオンが灯るころ。
静まり返った屋根の上を、三つの影が滑るように走る。
月明かりに照らされるレオタード姿の三姉妹は、しなやかな肢体で警備網を翻弄し、気づけば誰にも触れられない距離にいる。
脚線美、腰のライン、翻る長い髪。
派手な爆発も銃撃もないのに、なぜか視線が奪われる。
彼女たちが盗むのは、美術品や宝石だけじゃありません。
視聴者の視線、理性、そして心。
気づけば、盗まれているのは“こっち”です。
――怪盗キャッツ・アイ。
セクシーで、華麗で、どこか切ない。
大人になって見返すほど、「これは名作やな…」と唸らされる作品です。
……ただ。
奈良・橿原でFPとして仕事をしていると、どうしても職業病が出てしまう。
「この盗難、予告されとるよな?」
「で、予告を受け取った側、保険どうするん?」
キャッツ・アイといえば、あの有名な盗難予告状――
通称「キャッツカード」。
もし現実の博物館や美術館に、
「あす必ず盗みに行く」と堂々と宣言するカードが届いたら。
慌てて損害保険に加入することはできるのか?
それとも、その瞬間にもう“手遅れ”なのか?
今回はこの空想設定を使って、
保険実務で最もシビアな「告知義務」「危険の増加」「モラルリスク」を、FP目線で整理します。
結論:キャッツカード到着後の保険加入は、実務上ほぼ不可能
結論から言います。
キャッツカードが届いた「後」で損害保険に入るのは、実務上ほぼ不可能です。
理由はシンプル。
その瞬間、保険の前提条件が崩れてしまうからです。
保険とは本来、「起こるかどうかわからないリスク」に備える仕組み。
しかし、
「◯月◯日に盗みに入ります」と名指しで宣告された時点で、
その盗難はもはや不確実な事故ではありません。
“予定された事象”になります。
ここで登場するのが、保険実務のキーワード――
「危険の増加」です。
保険が最も嫌う言葉、「危険の増加」
保険会社は契約を引き受ける際、
「この管理状況なら、このくらいの確率で事故が起きるだろう」
という前提で保険料を算定しています。
ところが、キャッツカードが届いた瞬間、状況は一変します。
- 盗難対象が特定されている
- 実行が予告されている
- 犯行グループの成功率が高い
これはもはや「危険が増えた」ではなく、
危険が確定した状態です。
この状態で保険に申し込めば、
原則として引き受けはされません。
仮に契約できたとしても、
- 盗難補償の除外
- 特定美術品の免責
- 極端に高額な保険料
このいずれか、もしくは全部が適用されるのが実務です。
すでに保険に入っていても安心できない
「うちは前から保険に入っているから大丈夫」
そう考える方も多いですが、ここにも落とし穴があります。
それが通知義務です。
多くの損害保険約款には、
「危険が著しく増加した場合は、遅滞なく通知すること」
と定められています。
キャッツカードの到着は、実務上ほぼ確実に
「危険の著しい増加」に該当します。
これを通知せずに盗難被害が発生した場合、
保険金の減額、あるいは不払いとなっても、争うのは困難です。
保険会社が最も警戒する「モラルリスク」
保険会社が強く警戒するのがモラルリスク。
盗難が予告された直後に、
高額な保険をかける行為は、
「保険金目的ではないか?」
と疑われても不思議ではありません。
善意であっても、
疑われた時点で不利になるのが保険の世界です。
キャッツ・アイは華麗ですが、
保険の実務は驚くほどドライ。
ロマンは一切、考慮されません。
空想から学ぶ、現実の保険のシビアさ
キャッツ・アイの世界では、
盗まれる側もどこか覚悟を決めているように描かれます。
しかし現実では、
- 予告を受けた時点で新規加入は困難
- 既契約でも通知を怠れば不利
- 事後加入・事後増額は通用しない
保険は、事件が起きる前にしか味方にならない。
これが、空想おかねシリーズを通して伝えたい、
現実のお金のルールです。
奈良・橿原で事業をしている方も、
個人で大切な資産を守りたい方も。
「何か起きてから考える」では遅い。
キャッツカードが届く前に、
一度、ご自身の保険を見直しておくことをおすすめします。
📩 空想じゃない「現実のお金」の話も、相談できます
キャッツ・アイの話はフィクションですが、
保険の告知義務・通知義務・リスク判断は現実そのものです。
「これ、保険会社に言うべき?」
「入ってる保険、今の状況で大丈夫?」
奈良・橿原でFPとして活動している私が、
制度ベースで、忖度なく整理します。
※この記事はフィクションを題材にしていますが、
登場する保険・税務・制度の考え方は、すべて実務ベースです。