高額療養費があるから医療保険はいらない?入院経験FPが見た「見落とされがちな3つの負担」|奈良・橿原

こんにちは、橿原市のFP金川です。

ここ数年、ネットやSNSでよく目にするのが、

  • 「高額療養費があるから医療保険はいらない」
  • 「入院しても自己負担は数万円だから貯金で足りる」

という“医療保険不要論”です。

制度の仕組みとしては、たしかに一理あります。私自身も、高額療養費制度はとても優れた公的保障だと思っています。

一方で、実際に自分が肩の手術で入院を経験し、これまでのご相談事例を振り返ると、

「高額療養費だけでは拾いきれない負担」が、現場にははっきり存在すると感じています。

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この記事では、

  • 高額療養費でカバーできるもの・できないもの
  • 入院してみて初めて分かる「お金以外のしんどさ」
  • 医療保険を考えるときの“入口の考え方”

を中心に、「医療保険はいらないのか?いるとしたら、どんな考え方が現実的か?」を整理していきます。


高額療養費制度は「医療費の天井」を守ってくれる仕組みです

まず大前提として、高額療養費制度はとても心強い仕組みです。

ざっくり言うと、

  • 同じ月の窓口負担が一定額を超えた分はあとから払い戻される
  • 収入に応じて「自己負担の上限」が決まっている
  • 事前申請をしておけば、窓口での支払いも上限までで済む

という制度です。

詳しい計算方法や申請の流れは、こちらでまとめています。

【FP解説】高額療養費制度とは?自己負担限度額・申請方法を橿原市向けに解説

ですので、

「何百万円という医療費で家計が一気に破綻するリスク」は、高額療養費がかなり守ってくれる

というのは事実です。

ここまでは、いわゆる「医療保険不要論」の方が言っていることと、私も同じ意見です。


それでも“高額療養費だけ”では足りないと感じる3つの負担

では、なぜ私が「それでも、医療保険をゼロにするのは少し怖い」と感じているのか。

理由はシンプルで、

高額療養費はあくまで「医療費」の話であって、それ以外の負担までは守ってくれないからです。

特に現場でよく感じるのは、次の3つです。

1. 差額ベッド代──「静かに休める環境」は贅沢品か?

保険会社のパンフレットにもよく出てくる「差額ベッド代」。

簡単に言うと、

  • 大部屋(4人部屋など)… 追加料金なし
  • 少人数部屋・個室 … 1日数千円〜1万円超の“自費負担”

というイメージです。

ここを「贅沢」と見るか、「治療の一部」と見るかで意見が分かれますが、実際に入院した立場から言うと、想像以上に大部屋はハードです。

  • 他の方のいびき・咳・物音・ナースコール
  • カーテン1枚の向こうでの処置や会話
  • 自分の物音やにおいにも気を遣うストレス

自分が元気なときは「我慢すればいい」と思えても、手術後や痛みで弱っているときに、これらを全部受け止めるのはなかなか大変です。

「治療に集中できる環境にお金を払う」という発想は、決して贅沢ではないと感じます。

2. 収入ダウン──とくに現役世代・自営業は要注意

もうひとつ大きいのが、収入側のダメージです。

  • 会社員… 傷病手当金で一定割合はカバーされるが、満額ではない
  • 自営業・フリーランス… 働けない期間=そのまま売上ダウン
  • パート・アルバイト… シフトに入れない期間の収入が消える

医療費は高額療養費で上限が見えますが、「入ってこなくなるお金」には上限がありません

この「出ていくお金」と「入ってこないお金」の両方を見たうえで、医療保険をどう位置づけるかを考える必要があります。

長期で仕事を休まざるを得なかったケースとしては、椎間板ヘルニアの手術などが分かりやすい例です。

椎間板ヘルニアで入院&手術|実際にかかった費用と保険給付【FP体験談】

3. 細かい日用品やお見舞い返しより、「仕組み」でカバーしたほうがいいものも

保険のパンフレットには、

  • パジャマ・洗面用具などの日用品
  • お見舞いのお返し・快気祝い

といった費用もよく載っていますが、正直なところ、

  • 最近は入院セットのレンタル(パジャマ・タオル・洗面用具など)が1日数百円で利用できる病院も多い
  • コロナ禍以降、お見舞いそのものが制限されるケースも増え、快気祝いも簡素になっている

という変化があります。

つまり、ここを医療保険で厚くカバーしようとするより、病院のレンタルやキャッシュレス決済など「仕組み」で対応したほうが合理的な場合も多い、ということです。


短期入院は“一時金”、長期リスクは“日額”という役割分担

では、「高額療養費+貯金」だけでなく、医療保険もある程度持っておきたい場合、どう考えるのが現実的でしょうか。

私がご相談の中でよくお話しするのは、

  • 短期入院(数日〜2週間くらい)のストレスや雑費 → 入院一時金でカバー
  • 長期入院(数週間〜数ヶ月)の差額ベッド代や収入ダウン → 入院日額でカバー

という「役割分担」の考え方です。

入院日額や何日型にするかなど、具体的な設計は少し専門的になるので、こちらの記事で詳しくまとめています。

【FPが解説】入院日額はどれくらい必要?平均入院日数の“二極化”と医療保険の最適設計|奈良・橿原のFP相談

「そもそも、短期のリスクと長期のリスクを分けて考える」という視点だけでも、医療保険選びの見え方はかなり変わってくるはずです。


入院して分かった、“お金以外”のリアル

ここまで制度や数字の話をしてきましたが、最後に少しだけ、私自身の入院体験から感じたことも添えておきます。

肩の手術で2泊3日入院したとき、いちばん強く感じたのは、

  • 「痛みが強いときに、周りに気を遣うのはしんどい」
  • 「家族にあれこれ持ってきてもらう負担も、意外と大きい」

という、金額にしにくいストレスでした。

このあたりのリアルな流れや、実際にかかった費用については、別の記事で詳しく書いています。

腱板断裂の疑い→手術で判明した「関節唇損傷」。奈良のFPが語る医療費と保険のリアル

医療保険は「元が取れるか・取れないか」だけで評価されがちですが、実際には「どんな状態のときに、自分や家族をどこまで守りたいか」という価値観の話でもあります。


医療保険はゼロか100かではなく、「自分なりの落としどころ」を

ここまで読んでいただいて分かる通り、

  • 高額療養費があるから、医療保険が絶対いらないとは言い切れない
  • 一方で、なんでもかんでも“フルセット”で入る必要もない

というのが、現場で相談を受けているFPとしての正直な感覚です。

大事なのは、

  • 公的保障(高額療養費など)でどこまで守られるかを知る
  • 足りない部分(差額ベッド代・収入ダウンなど)をどう補うか考える
  • そのうえで、貯金・医療保険・がん保険などを自分なりのバランスで組み合わせる

という順番で考えることです。

医療保険全体の必要・不要の考え方については、こちらの記事もあわせて読んでいただくと整理しやすいと思います。

医療保険・がん保険は本当に必要?不要な人・入るべき人の違いをFPが解説【2025年最新版】


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  • 30〜40代の子育て世代
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文責:奈良・橿原の独立系FP 金川 崇(かながわFP相談所)

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