制服が破れたら公務災害?ウルトラマンの変身行為を制度で本気検証【FP解説】

制服が破れたらどうなる?ウルトラマンの変身行為を「公務災害」で本気検証する

前回の「デビルマン編」では、変身によって私物の服が破れる場合、火災保険や家財保険で救済できるのかを検証しました。

では次の疑問です。

もしその変身が「公務中」だったら?

今回の主役は、ウルトラマン。
科学特捜隊(以下、科特隊)の一員が、正体を隠したまま巨大化し、結果として制服や装備が破損した場合、それは誰の負担になるのか。

これは空想ですが、制度の話は現実です。


前提整理:ウルトラマンは「勝手に変身」している

まず重要なポイントから。

ウルトラマン(初代〜ジャック含む)は、
基本的に「上司から変身命令を受けていません」

・変身の事実は組織に秘密
・司令部は「人間隊員が戦っている」と認識
・巨大化は本人の判断

つまり制度的に見ると、これは

「命令なき行為」「職務逸脱に見える行動」

になります。

ここが、労災・公務災害の判断で最大の争点になります。


論点① 制服の破損は「業務中の物損」か?

公務災害(警察・消防・自衛隊・準公務員等)で補償されるのは、

  • 業務による負傷・疾病
  • 通勤災害

であり、原則として「私物の破損」は対象外です。

ただし例外があります。

それが、

「業務に通常伴う行為に付随して生じた損害」

消防士が消火活動で制服を焼いた、警察官が職務執行中に装備を破損した――
こうしたケースでは、公費負担や補償対象になることがあります。

問題はここです。

ウルトラマンの変身は「通常の業務」に含まれるのか?


論点② 巨大化は「職務行為」か「私的行為」か

科特隊の正式な業務内容は、

  • 怪獣の調査
  • 対策立案
  • 装備を用いた迎撃

であって、

「巨大化して肉弾戦を行う」ことは想定されていません。

つまり制度上は、

・人間サイズでの活動=職務
・ウルトラマンとしての戦闘=想定外行為

と整理される可能性が高い。

この場合、変身に伴う制服破損は、

「職務外行為による私物破損」

と評価され、自腹になるのが原則です。


論点③ それでも救済される可能性があるとしたら

ここでFP的な「ウルトラC」を考えます。

もし、

  • 変身しなければ基地や市街地が壊滅していた
  • 人命被害が避けられなかった
  • 他に代替手段がなかった

と立証できる場合。

これは「緊急避難的行為」として、

・職務との相当因果関係
・損害防止目的

が認められる余地があります。

消防士が命令を待たずに人命救助を行ったケースと同じ理屈です。

この場合、制服破損は

「業務遂行に付随する不可避の損害」

として、公費補填や内部処理で救済される可能性が出てきます。

ただし――

正体を隠している限り、本人が説明できない。

ここが最大のジレンマです。


作品ごとの差分(将来シリーズ化の布石)

ちなみに、シリーズごとに事情は微妙に異なります。

初代・ジャック:
ほぼ単独判断。組織的承認は極めて薄い。

エース:
北斗・南の2名体制。序盤は組織との距離が近く、
「業務との一体性」はやや強い。

この違いによって、
公務性・職務関連性の評価は変わる可能性があります。

――このあたりは、別記事で深掘りする価値がありますね。


まとめ:正義のヒーローは制度に守られているとは限らない

・変身は命令か、自己判断か
・業務内容に含まれているか
・緊急性と代替手段の有無

これらが揃って初めて、
制服の破損や身体の被害は「公務災害」として救済されます。

ウルトラマンは地球を守っていても、
制度は「空気を読んで」はくれません。

これは現実世界でも同じです。

「正しいことをしたのに補償されない」
そうならないために、制度は事前に知っておく必要があります。


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※次回予告:
ウルトラマンは作品ごとに立場が違う。
エース、タロウ、ジャック…
組織との関係性が変われば「公務性」の評価も変わる。
この続きは、別記事で詳しく掘り下げます。

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