空想おかねシリーズ:ドラゴンクエストV編 石化した国王と、8年後の相続
──グランバニアの王、石と化す。
2025年10月30日、ドラゴンクエストⅠ・Ⅱのリメイク版が発売される。
 長年のファンにとっては、あの懐かしい「伝説の始まり」が再びよみがえる日でもある。
 その節目にあわせて、今回は『ドラゴンクエストV』を題材に、少し違った角度から“お金と法律”を読み解いてみたい。
王家の証を手にし、父パパスの跡を継いだ青年は、ついに国王となった。
 そして、王妃ビアンカとの間に生まれた双子の誕生。
 幸せの絶頂から一転、魔物の手により妻はさらわれ、王は呪いによって石像へと変えられる。
 ※フローラ派・デボラ派の皆さま、ご安心を。
 今回の考察は「王妃=ビアンカ」ルートで進みますが、
 相続の仕組みはどの花嫁でも共通仕様でござる🌸(さすが国王クラスの平等設計)
──その後、八年の歳月が流れた。
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王不在の八年間、グランバニアはどうなっていたのか?
物語では詳しく描かれないが、これは「国家のトップが失踪した」極めて重大な事態である。
 王妃も行方不明、残されたのは生まれたばかりの双子と執事サンチョだけ。
 サンチョは城を離れ、子どもたちを地方に避難させて育てる。
つまり、王権も財産も宙づりのまま八年間が経過していたことになる。
 現実に置き換えれば、これはまさに「失踪宣告」の世界だ。
石化=死亡扱い? 民法で見る王の運命
日本の民法では、7年以上行方不明になると「失踪宣告」により死亡とみなされる(民法第30条)。
 8年間も石の姿で消息不明なら、国王は完全に死亡扱いとなる。
その結果──
- 王位は空位、または摂政による暫定統治
- 王家の私有財産は相続対象に
- ビアンカが行方不明のため、相続人は双子の子どもたち
双子はまだ幼いが、代理人(サンチョなど)を通じて法定相続が成立していたはずだ。
 財産の分配は民法に基づけば、妻が生存していれば1/2、子が各1/4。
 ただし、妻も不在のため、結果的に子どもたちがすべてを受け継いだ可能性が高い。
そして奇跡の復活──しかし王の財産は戻らない
やがて、勇者となった息子と娘が父の石像を見つけ、呪いを解く。
 歓喜の再会。王は再び生を得た。
 しかし、法の世界では物語ほど優しくない。
民法第32条ではこう定められている。
失踪宣告を取り消しても、既に確定した相続の効力は影響を受けない。
つまり──主人公の財産は、すでに子どもたちのもの。
 取り戻せるのは「現存利益」、すなわち残っている分だけ。
 もし城が建て替えられ、王冠が質入れされていたなら、それはもう戻らない。
勇者が父に向かって言う。
「父上、これは僕らの代で守るよ」
──その瞬間、王は静かにうなずく。
 法を超えて、家族の絆は生き続けていた。
 ※民法第32条における「善意」とは、本人が生存していることを知らなかった場合を指す。
 反対に「悪意(知っていた)」で財産を処分した場合は、行為が取り消され、返還義務を負う。
現代にも通じる“石化リスク”──家族信託という魔法
実はこの話、ファンタジーの中だけではない。
 長期入院・認知症・海外長期赴任など、現実にも「本人が動けない」ケースは存在する。
そのとき、預金や不動産はどうなるか?
 名義人が動けないと、口座凍結・資産凍結が起こる。
 家族が困らないようにするには、あらかじめ家族信託や任意後見契約などで備えることができる。
──「王が石化しても、王国は止まらない」ために。
 それが現代における、法の魔法である。
勇者が旅立つのは、父が遺した意志を継ぐため。
 そして我々が未来へ資産を残すのもまた、同じことなのかもしれない。
君は、もしもの時に備える“魔法”を持っているだろうか?
本稿は「空想おかねシリーズ」の一編です。
 架空の物語を題材に、現実の制度をFPがわかりやすく解説しています。
 この記事の監修:
 かながわFP相談所(奈良県橿原市)
 代表:金川 崇(AFP/2級FP技能士/宅地建物取引士)
 共働き・子育て世代のための家計と保険の相談を行っています。
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