【奈良・橿原のFPが解説】iDeCoは教育費にも効く?保育料・学費支援と「流動性リスク」の本当の話
「iDeCo=老後資金づくりの制度」というイメージをお持ちの方が多いと思います。たしかに、年末調整の時期になると控除証明書を出すだけで税金が下がるという意味で、iDeCoは節税メリットに優れた制度です。
一方で、以前の別記事でもお伝えした通り、iDeCoには「流動性が極めて低い」という現実があります。60歳まで原則引き出せず、「ちょっとだけ崩す」ということもできません。キャッシュフローが変動しやすい子育て世帯にとっては、ここを無視すると家計が硬直化してしまいます。
今回はそのうえで、奈良・橿原エリアの保育料や学費支援の仕組みも踏まえながら、「iDeCoは教育費の面でどこまで味方になるのか」を整理してみます。
▼ 先に読んでおきたい「iDeCoの流動性と本音レビュー」
iDeCoそのもののメリット・デメリットや、私自身が感じた「お金があるのに動かせない」もどかしさについては、こちらで詳しく書いています。
iDeCoはおすすめだけど“流動性は最悪”?年末調整の節税メリットと、私が実際に感じたもどかしさをFPが本音で解説
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iDeCoの本質は「税金と将来のために、今のお金をロックする」制度
最初に、iDeCoの本質を簡単に整理しておきます。
- 掛金全額が所得控除になり、所得税・住民税が下がる
- 運用益は非課税で、長期運用の複利効果を最大限に活かせる
- 受け取り時も、退職所得控除や公的年金等控除の対象になりやすい
節税だけを見れば、iDeCoは「最強クラス」の制度です。私自身もiDeCo口座でコツコツ積み立てを続けており、数字としてはしっかり増えています。
ただし同時に、これは「税金と将来のために、今のお金をロックする」制度でもあります。ここを理解せずに掛金だけ増やしてしまうと、生活費・教育費・住宅ローンなどの支出とぶつかったときに身動きが取りづらくなります。
橿原市の保育料は「4月・9月決定」×「市町村民税額」がカギ
子育て世帯にとって、まず押さえておきたいのが保育料の仕組みです。私の地元・橿原市の場合、保育料は次のように決まります(橿原市公式サイトより要約)。
- 保育料の決定時期は4月と9月の年2回
- 4月〜8月分の保育料は「前年度の市町村民税額」を基に決定
- 9月〜3月分の保育料は「その年度の市町村民税額」を基に決定
- 保育料は、世帯の収入(税額)と入所児童の年齢によって異なる
あわせて、次のようなルールもあります。
- 3歳児〜5歳児(クラス年齢)の保育料は原則「無償化」
- 0歳〜2歳児でも、住民税非課税世帯は保育料が無償
- 令和5年4月から、第2子以降の保育料は橿原市独自で無償化
ざっくりまとめると、橿原市では「世帯の市町村民税額」と「子どもの年齢・きょうだい構成」で保育料が決まるという構造です。
この「市町村民税額」に対して、iDeCoの掛金がどのように効いてくるのかが、教育費とiDeCoの接点になります。
iDeCoの所得控除は、保育料や学費支援の「土台の数字」に効く
iDeCoの掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除の対象になります。その結果、
- 所得税が下がる
- 住民税(市町村民税・道府県民税)が下がる
この「住民税が下がる」という点が、保育料や学費支援の場面で効いてきます。
橿原市のように、保育料が市町村民税額をベースに決まる自治体では、同じ「年収」の世帯であっても、
- iDeCoで一定額を積み立てている世帯
- iDeCoを全く使っていない世帯
では、市町村民税額が変わり、その結果として保育料の区分が一段階変わるケースが出てきます。
同じように、大学や専門学校などの「高等教育の修学支援新制度(授業料減免・給付型奨学金)」も、パンフレット上は「世帯年収○○万円」と説明されていても、実際の判定は所得・住民税ベースで行われます。
つまり、iDeCoの所得控除は、
- その年の税金を下げるだけでなく
- 保育料や学費支援の「土台となる数字」にも影響しうる
という意味で、子育て世帯の教育費にも間接的に効いてくる制度と言えます。
ここまでは、前向きな面の話です。ただし、このプラス面だけで判断すると、あとで困ることがあります。
それでも消えない、iDeCoの「流動性リスク」
ここまで読むと、
「だったら、子どもが小さいうちはiDeCoをガンガン使えばいいのでは?」
という気持ちになるかもしれません。
しかし、ここで改めて思い出したいのが、iDeCoの流動性の低さです。
- 原則60歳まで引き出せない(例外は障害状態・死亡など)
- 「一部だけ取り崩す」ということができない
- 途中で掛金を止めることはできても、積み上がった残高は動かせない
貯蓄型保険と比較すると、保険は途中解約すると損はしても現金化はできます。一方でiDeCoは、そもそも現金化ができないという意味で、保険よりも流動性が低いと言えます。
私自身、iDeCo口座の残高が順調に増えているのは心強い反面、正直なところ、
「今このタイミングで少し出せたら助かるのに……」
と感じた瞬間が何度もありました。制度のルールを理解した上で加入していても、人生の変化や予期せぬ出費が重なると、「お金があるのに動かせない」というストレスは、想像以上に大きいものです。
NISAとの決定的な違い:「すぐ減らせない・すぐ止められない」
もうひとつ、現場でよく誤解されているのが「変更のしやすさの違い」です。
- NISA:積立額の変更・一時停止が比較的柔軟。変更してからの反映も早い
- iDeCo:掛金変更は年1回まで。申し込みから実際の掛金が変わるまでタイムラグがある
つまり、iDeCoは次のような調整が苦手です。
- 「今月から家計がきついので、来月分からすぐ減らしたい」
- 「ボーナスが出たから、来月だけ掛金を増やしたい」
NISA感覚で「様子を見ながら増減すればいいか」と考えてしまうと、
- 気づいたときには家計がきついのに掛金だけは走り続けている
- 減らしたいと思ったタイミングから、実際に減るまで間が空く
というズレが生じます。「即時変更ではない」という性質も含めて、iDeCoはやはり、ある程度余力がある人が、計画的に使うための制度だと考えています。
2027年からの掛金上限アップは「節税メリット」と「ロック資産増加」の両方を見る
本記事執筆時点(2025年12月)では、2027年1月からiDeCoの掛金上限が引き上げられる予定です。たとえば、企業年金のない会社員の場合、
- 現行:月2万3,000円(年27万6,000円)
- 改正後:月6万2,000円(年74万4,000円)
と、大きく拡大する見込みです。
(※具体的な時期・内容は今後の制度変更で変わる可能性があります。最新情報は金融庁等の公的情報をご確認ください。)
節税だけを見ると、たしかに非常に魅力的です。掛金が増えれば、その分だけ所得控除も増えます。
ただし、子育て世帯にとっては、
- 「節税効果が大きい」=「60歳まで動かせないお金が一気に増える」
という側面も忘れてはいけません。
特に、住宅ローン・教育費・老後資金が重なりやすい40〜50代では、
- 「とりあえず節税になるから」と上限近くまで入れてしまう
- 気づけば、家計の自由度が下がり、NISAや預金に回す余裕がなくなる
というケースも想像できます。制度が拡充されるほど、キャッシュフロー設計の重要性も増す、という視点が大切です。
子育て世代の3パターン別・iDeCoとの距離感
ここまでの話を、ざっくり3パターンに分けて整理してみます。
パターンA:預金・NISAともに十分、手元資金にも余裕がある世帯
- 生活防衛資金(3〜6か月分以上)が確保できている
- NISAなど「途中で動かせる資産」もある程度積み上がっている
- 住宅ローン・教育費の見通しも立っている
このような世帯にとっては、iDeCoは「老後資金+節税+(場合によっては)教育費にも効く制度」として活用しやすいと考えています。掛金を少し厚めに設定して、保育料や学費支援へのプラス効果も狙っていくのは選択肢の一つです。
パターンB:預金はあるが、NISAはこれから/教育費の見通しが不安な世帯
- いざというときの預金はある程度ある
- ただし、NISAなどの運用資産はこれから積み上げたい
- 住宅ローンや教育費のピークがこれから来る
このパターンでは、iDeCoを「少額スタート」にとどめる選択をおすすめすることが多いです。
- まずはNISAで、中期〜長期の教育費・老後資金のクッションを作る
- それでも余力がある部分を、iDeCoで固めていく
という順番で考えると、家計の柔軟性を保ちやすくなります。
パターンC:毎月のやりくり自体がギリギリの世帯
- 毎月の生活費のやりくりに余裕がない
- 突発的な出費があると、すぐに資金繰りが苦しくなる
このパターンでは、iDeCoよりも、まずは生活防衛資金と教育費の現金クッションづくりを優先する方が、現実的だと感じています。
「将来のためにロックするお金」よりも、
「今の生活と、数年以内に確実に必要になるお金を守ること」が先です。
結論:iDeCoは「教育費にも効く」が、あくまで余力と順番が前提
ここまでをまとめると、私(金川)のスタンスは次の通りです。
- iDeCoは老後資金づくりだけでなく、保育料や学費支援の面でもプラスに働く可能性がある
- 一方で、流動性が極端に低く、掛金変更もNISAのように即時反映ではない
- 「節税になるから」と勢いで掛金を増やすと、家計の自由度を失うリスクがある
iDeCoそのものは、私は「おすすめ」です。
ただし、その前提は次の2つだと考えています。
- 生活防衛資金と、途中で動かせる資産(預金・NISAなど)がきちんと確保できていること
- 保育料や学費支援の制度も含めて、ライフプラン全体で検討していること
「うちの家計だと、iDeCoをどのくらい入れて大丈夫なのか?」
「NISAや保険とのバランスはこれで良いのか?」
これは、ざっくりしたイメージだけでは決めきれません。実際に数字を並べてみて、キャッシュフロー表の上で確認してみると、「ちょうどいいiDeCoとの距離感」が見えてきます。
奈良・橿原周辺で、iDeCo・NISA・保険のバランスに悩んでいる方は、一度お気軽にご相談ください。
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奈良・橿原でiDeCo・NISA・保険のバランスを相談したい方へ
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運営者情報
かながわFP相談所 金川 崇(かながわ たかし)
- 奈良県橿原市在住の独立系FP・IFA
- ライフプラン相談1,000件超の実務経験
- AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/証券外務員
- 生命保険・損害保険・証券・不動産を横断した家計相談を実施
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