ブラック・ジャックとドクターK、手術費は「医療費控除」できるのか?無免許医と国税庁の壁

もしブラック・ジャックに手術を頼んだら?

漫画やアニメで誰もが一度は憧れる、神の手を持つ天才外科医たち。

「ブラック・ジャック」に数千万円を積んで命を救ってもらう。
「ドクターK」に裏社会で奇跡の手術を受ける。

ロマンがありますよね。しかし、私がファイナンシャルプランナー(FP)として彼らの物語を読み返したとき、感動とは別の「ある冷徹な事実」に気づいてしまいました。

それは、命が助かった後に訪れる「確定申告」の絶望です。

もしあなたが、彼らに支払った巨額の手術費を「医療費控除」として申告しようとしたらどうなるか。国税庁という現実は、漫画の世界よりもはるかに非情です。

今回は、そんな空想の世界を入り口に、奈良・橿原で暮らす私たちの生活にも直結する「医療費控除」と「自由診療」の落とし穴について解説します。

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ブラック・ジャックに払った1億円は「紙くず」同然?

結論から申し上げます。

もしあなたがブラック・ジャック(以下、BJ)に手術を依頼し、請求された1億円を支払ったとします。命は助かりました。しかし、翌年の確定申告でその1億円を医療費控除として申請しても、1円も認められません。

「命の対価なのに?」と思われるかもしれませんが、理由はシンプルです。

国税庁が見るのは「神の手」ではなく「免許」

所得税法上の医療費控除の要件には、明確にこう書かれています。
「医師または歯科医師による診療、または治療の対価」であること。

ご存知の通り、BJは無免許医です。世界中の医師連盟が彼の腕を認めていようと、患者がどれほど感謝していようと、日本の税法上、彼は「ただの無資格者」に過ぎません。

したがって、彼に支払ったお金は「医療費」として定義されないのです。

贈与税はかからないが、控除も効かない

ここで一つ、面白い論点があります。

「じゃあ、あのお金はBJへの贈与(プレゼント)になるのか? 贈与税がかかるのか?」

これについては、おそらく贈与税の対象にはなりません。なぜなら、あなたは「手術」という役務(サービス)の提供を受け、その「対価」としてお金を支払っているからです。対価性がある以上、それは贈与ではなく取引です。

つまり、整理するとこうなります。

  • 贈与ではないので、法的な支払いの体裁は保たれている。
  • しかし、相手が医師ではないため、医療費控除の対象外。

結果として、支払った1億円は税制上の優遇を一切受けられない、単なる「私的な支出」として処理されます。財布からは1億円消え、税金は1円も安くならない。これが無免許医に頼るということです。

一方、ドクターK(KAZUYA)なら「節税」ができる理由

では、同じ裏社会の医師でも、『スーパードクターK』の主人公、KAZUYAならどうでしょうか。

実は彼の場合、医療費控除が認められる可能性が高いのです。

医師免許の有無が運命を分ける

Kは、帝都大学医学部を首席で卒業した正規の医師です。裏社会に身を置いてはいますが、医師免許を持っています。

彼が行う医療行為は、法的に「医師による診療」に該当します。したがって、彼に支払った手術費は、胸を張って医療費控除の対象と言えるのです。

最大の壁は「領収書」

ただし、実務上は巨大な壁が立ちはだかります。「領収書」です。

医療費控除を受けるには、原則として医療費の領収書や、医療費通知が必要です(現在は領収書の添付は省略可能ですが、5年間の保存義務があり、税務署から提示を求められたら出す必要があります)。

想像してみてください。筋肉隆々の巨漢であるドクターKが、人里離れた場所で手術を終えた後、あなたが彼に向かってこう言えるでしょうか。

「あの、先生。インボイス対応の領収書ください」

この一言が言える度胸があるなら、あなたは数千万円単位の節税に成功するでしょう。しかし、領収書がなければ、税務署は「支出の証明がない」として否認します。

結局のところ、正規の医師であっても、領収書が出ない(出にくい)環境での治療は、税制上のリスクが極めて高いのです。

共通する悲劇。「高額療養費制度」という最強の盾がない

BJにせよドクターKにせよ、彼らに依頼する場合、共通して発生する致命的なデメリットがあります。

それは「健康保険が使えない(自由診療)」ということです。

私たちが普段、奈良や橿原の病院で手術を受けるとき、窓口で支払うのは全体の3割だけです。さらに、日本の公的保険には「高額療養費制度」という最強の盾があります。

年収にもよりますが、どんなに高額な手術をしても、月々の自己負担額はだいたい8万円〜10万円程度で頭打ちになります。

3000万円 vs 10万円

もし3000万円の手術を受けた場合を比較してみましょう。

【ブラック・ジャック(自由診療)】
自己負担:3000万円
医療費控除:0円(対象外)

【地元の病院(保険診療)】
医療費総額:3000万円
窓口負担(3割):900万円
高額療養費制度適用後の実質負担:約10万円

この圧倒的な差。これこそが、私たちが毎月保険料を払っている理由であり、公的保険の凄みなのです。

自由診療には、最先端の治療を受けられる等のメリットは確かにあります。しかし、そこには「全額自己負担」かつ「高額療養費制度が使えない」という巨大なリスクがあることを、私たちは忘れてはいけません。

まとめ:奈良県民は、素直に保険証を持って病院へ行こう

天才的な腕を持つ闇医者は魅力的です。しかし、FPの視点から見ると、彼らへの依頼は資産形成において最大級のリスク要因となります。

  • 無免許医への支払いは、医療費控除の対象にならない。
  • 領収書のない取引は、税務署には対抗できない。
  • そして何より、保険証という「最強の割引パスポート」を使わない手はない。

奈良県には素晴らしい医療機関がたくさんあります。橿原には医大もあります。
何か体に不調を感じたら、裏社会の天才を探す前に、まずは保険証を持って地元の病院へ行きましょう。

「正規の医師」に診てもらい、「保険」を使い、しっかり「領収書」をもらう。

これが、あなたの健康と資産を同時に守る、最も確実な防衛術なのです。


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