がん保険は「治療費」の保険ではない──生存率9割時代の「意思決定」を守る技術

多くの人が勘違いしている「がん保険」の前提

こんにちは。奈良・橿原のFP、金川です。

私は独立系ファイナンシャルプランナー(IFA)および宅建士として、日々多くの方のお金に関するご相談に乗っています。

「がん保険? 高額療養費制度があるから、民間の保険なんていらないよ」
「医療保険に入っているから、がんに特化した保障は不要だ」

相談現場で、こうした声を耳にしない日はありません。
確かに、日本の公的医療制度は非常に優秀です。
治療費だけを見れば、半分は正解かもしれません。

しかし、52歳になった私が、先日いち患者として病室の天井を見上げながら考えていたのは、全く別のことでした。
結論から申し上げます。がん保険は治療費を払うための保険ではありません。

がんという病と向き合うことになった時、最も守らなければならないのは通帳の残高ではなく、あなたの意思決定の質なのです。


歴史的証左:なぜ昔の「がん保険」は死の備えだったのか

そもそも、がん保険は何のために生まれたのか。そのルーツを知ると、今の私たちが抱いている違和感の正体が見えてきます。

1974年、日本初のがん保険が誕生した背景

日本で初めてがん保険が発売されたのは1974年のことでした。当時の日本において、がんは告知=死の宣告に近い時代です。医学的な治療手段も現代ほど多様ではなく、早期発見という概念すら一般的ではありませんでした。

なぜ、当時の保険にがん死亡特約が当たり前についていたのか。それは極めて残酷な理由、つまり、がんは治らない病気であったことの何よりの証左です。
もちろん当時も入院・手術給付は存在しましたが、設計思想の中心は治る前提ではなく万一(死)への備えでした。生存して治療を続けるという想定が弱く、残される家族の葬儀代や生活費を確保するための、一種の死亡保険としての性格が強かったのです。

治療の進歩が保険の前提を壊した

それから半世紀。2026年1月14日に公表された全国がん登録データでは、前立腺がんは92.1パーセント、乳がんは88.0パーセントに達しています。これは、がんはもはや死を待つ病ではなく、長く付き合いながら克服を目指す共存する病に変わったことを意味しています。

なお、生存率が低いがんであっても、短期間でより重い意思決定を迫られるという点では、この共存の難しさは共通しています。


FPが「まな板の上の鯉」になって初めて気づいたこと

先日、私も膀胱の腫瘍を手術しました。9日間の入院生活で、検査結果を待つ間、私の頭を支配していたのは治療費の計算ではありませんでした。

本当に怖かったのは、正常な判断力が失われることでした。

「もし悪性だったら、仕事はどうしよう?」
「今後の働き方をどう変えるべきか?」
「家族にはどう説明し、どう支えてもらうか?」

体調が悪い中で、こうした重たい決断を同時に迫られるのです。そんな時、手元に使途の自由な診断給付金(一時金)があるとしたら、それはどれほど心強いでしょうか。


がん保険は「意思決定」を守るための防弾チョッキ

がん保険が本当にカバーしているのは、医療費という名の支出だけではありません。判断力が落ちた状態でも、生活と意思を壊さないための猶予を買っているのです。

十分な流動資産があれば、がん保険が不要な人もいます。ただ多くの家庭では、教育費・住宅ローン・老後資金と目的別にお金が固定され、判断に使える余白資金が不足しがちです。

  • 収入のブレーキへの備え: 仕事を一時的にセーブしても、生活を維持できる。
  • 働き方の選択肢: 無理に復帰せず、心身の状態に合わせたシフトチェンジができる。
  • 先の見えない不安への対抗策: まとまった現金があるという余裕が、焦燥感を和らげる。

医療費は高額療養費制度などの公的制度が守ってくれます。

しかし、あなたの人生の意思決定を支えてくれる制度は、今の日本にはありません。


まとめ:あなたの「生き残る前提」は守られていますか?

生存率が高まった現代において、がん保険が不要だという議論は論点がズレています。生存率が高いということは、がんというリスクを抱えたまま、長期の資産形成や教育資金の準備を続けなければならない期間が伸びたことを意味するからです。

これはがん保険を勧めたい話ではありません。今の医療と人生設計に、昔の保険の前提が合っているかを問い直す話です。

私は今回、病室で天井を見上げながら「これは治療費の話じゃないな」と、FPとして、そして一人の人間として腹落ちしました。

「私の保険、診断一時金って入ってるかな?」
「最新の医療事情に合っているんだろうか?」

もし少しでも不安を感じたら、遠慮なくご相談ください。私がまな板の上で感じたあの恐怖と、最新の医療データを踏まえ、忖度なしであなたの保障を診断させていただきます。