ホームアローン1・2をFPが本気で分析したら笑えない話になった件
ホームアローンを観るたびに、子供の頃は純粋にケビンを応援していた。
でも大人になってFPになってから観直したとき、全然違う視点になってしまった。
「この泥棒コンビ、事業として成立してないやん」
「8歳がプラザホテルにチェックインできるんか」
笑いながらツッコんでいたら、気づけば現実のお金の話になっていた。今回はその話をしたい。
前編:泥棒コンビは「最悪の個人事業主」だった
泥棒という「仕事」のコスト構造
ハリーとマーブの2人は「ウェット・バンディッツ」として複数件の住宅を計画的に狙う、いわゆるプロの空き巣だ。
事業として見ると、相当に非効率な構造をしている。
まず売上が不安定すぎる。どんな家に入れるか、中に何があるかは事前にわからない。マカリスター家を狙ったのも「クリスマスで留守になりそうだから」という読みがあったからだけど、実際に何があるかは入るまでわからない。売上予測が立たない事業は、財務的にかなり厳しい。
次に廃業リスクが極めて高い。逮捕された瞬間、収入がゼロになる。前科がつくと次の「仕事」のリスクも跳ね上がる。2作目では刑務所から脱獄して再登場するんだけど、もうキャリアとして詰んでいる。
そして決定的な問題が一つある。
労災がないということだ
ケビンが仕掛けたトラップで2人はボロボロになる。
熱したドアノブで手のひらを焼かれ、顔面にアイロンが落ちてきて、タールと羽根にまみれて、釘の上を歩かされる。
通常の仕事であれば、業務中の負傷は労災保険の対象になる。治療費は出るし、休業中も給付がある。
でも泥棒に労災はない。当然だ。
ただここで笑って終わりにしてほしくない。
日本のフリーランスや個人事業主の多くが、実は似たような状況にある。労災保険は原則として会社員のための制度で、個人事業主は適用外だ。特別加入制度という任意加入の仕組みがあるけど、実際に加入しているフリーランスは少数だ。
仕事中に怪我をしたら、治療費も休業中の生活費も全部自己負担になる。
ハリーとマーブが全身ボロボロになっても誰も補償しない状況は、フリーランスが無保険で現場に出ているのと構造が一緒だ。笑えないでしょう。
もしケビンがいなかったら
少し視点を変えて、ケビンが本当に留守だった場合を考えたい。
マカリスター家はシカゴ郊外の明らかに裕福な家庭だ。現金・貴金属・家電が相当数あると推測できる。警察庁のデータでは侵入窃盗1件あたりの平均被害額は数十万円規模とされているが(年度により変動・推測含む)、この家の場合は数百万円規模の被害になっていた可能性が十分ある。
こういった被害をカバーするのが、火災保険の家財補償だ。空き巣被害も補償対象になることを知らずに加入している方が多い。補償の範囲や免責金額は契約内容によって異なるので、一度確認してほしい。
ケビン側にもリスクはあった
ここで一つ、FPとして正直に言わないといけないことがある。
ケビンが仕掛けたトラップで泥棒が怪我をした場合、ケビン側に損害賠償責任が生じる可能性がある。
不法侵入者なのにおかしいと思うかもしれない。でも日本の民法では、設置物による損傷について占有者・所有者責任が問われうるケースがある。
では個人賠償責任保険で対応できるか。
ここが難しい。この保険には「故意による不法行為は免責」という原則がある。事前に怪我をさせる目的で設置したトラップは故意と判断される可能性があり、保険金が出ないケースも考えられる。
自分の家を守ったのに保険が使えない、という逆転が起きうる。正当防衛と故意免責の境界線は、実務でも判断が難しい領域だ。
後編:8歳がプラザホテルで散財した967.43ドルの話
ニューヨークに一人残された8歳
2作目でケビンはひょんなことからニューヨークに一人取り残される。
手元には父ピーターのカバン。中身は大量の現金、手帳、そしてクレジットカードだ。
ケビンはそのカードでプラザホテルのスイートルームにチェックインし、ルームサービスを満喫し、リムジンに乗り、おもちゃ屋で爆買いする。
映画のラスト、ピーターが請求書を見て絶叫するシーンがある。
その金額、967.43ドル。ルームサービス代だけでこれだ。
今のレートで換算すると約152,853円。ピーターが絶叫するのも無理はない。
未成年者の契約、取り消せるか
ここでFP的に面白い問いが立てられる。
ケビンはチェックインの際に父親になりすまして契約を結んでいる。これ、日本の民法で考えるとどうなるか。
民法5条では、未成年者が法律行為をする場合は親の同意が必要で、同意なしの契約は取り消せると定めている。ホテルへのチェックインも契約なので、理論上は親が取り消せる可能性がある。
ただし今回はケビンが父親になりすましている。詐術を用いて相手方を信じ込ませた場合は取消しができないという例外規定もある(民法21条)。完全に取り消せるかどうかは微妙なラインだ。
クレジットカードの不正利用問題
もう一つ重要な話がある。
ピーターはカードが使われたと知った瞬間、盗難手続きを取っている。これは実務的に正しい判断だ。
各カード会社の規約では、カードは本人のみが使用できると定めている。家族であっても、本人以外の使用は規約違反になりうる。家族カードとして正式に登録されていない限り、子供が親のカードを使うのは不正利用扱いになる可能性がある。
ここで現代の話をしたい。
スマホゲームで子供が親のカードを使って高額課金してしまうトラブルが増えている。構造はケビンのプラザホテルと全く一緒だ。未成年者の取消権が使えるケースもあるが、ゲーム会社との交渉は思った以上に時間がかかる。
対策は一つ。子供がアクセスできる場所にカード情報を置かないことだ。
ちなみに劇中にはトランプが出てくる
当時プラザホテルのオーナーだったドナルド・トランプが、ロビーでケビンに道を教えるカメオ出演をしている。政治的な話はしないけど、あのシーンを知っている人は多い。1992年の映画にこんな形で残っているのは面白い。
まとめ
前編は労災のない個人事業主のリスク、後編は未成年者の契約と家族カードの不正利用。
テーマは全然違うけど、根っこは一緒だ。
「知らなかった」では済まないお金のリスクが、身近なところにある。
ハリーとマーブのように全身ボロボロになってから気づくのも困るし、ピーターのように請求書を見て絶叫するのも困る。
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かながわFP相談所(奈良県橿原市)は保険・NISA・住宅ローン・ライフプランを中立な立場でサポートする独立系FPです。橿原市・奈良市・大和高田市・桜井市など奈良県全域+全国オンライン対応。
この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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