タブネオスと指定難病の医療費|助成制度で軽減できる金額と、それでも保険が必要な理由をFPが解説
今日、Googleのトレンドに「タブネオス」という言葉が上がっていた。
最初は何の薬かわからなかった。調べてわかった。ANCA関連血管炎という希少疾患の治療薬だ。
そしてこう思った。「相談に来られた方の中に、この病気の方がいたら、今の保険でどこまで備えられるのか」と。
この記事では、タブネオスを入口にして、指定難病の医療費と公的制度、そのまま民間保険の限界について整理する。
ANCA関連血管炎とタブネオスとは
ANCA関連血管炎は、免疫の異常によって全身の細い血管に炎症が起きる疾患だ。顕微鏡的多発血管炎(MPA)と多発血管炎性肉芽腫症(GPA)が主な病型で、腎臓・肺・神経などに症状が出やすい。
2014年に指定難病に認定されている。
タブネオス(一般名:アバコパン)は2022年6月に国内で使用可能になった治療薬だ。従来の治療で必須だったステロイドへの依存を減らす新たな選択肢として注目された薬剤だ。
薬価は1日あたり8,424円。1ヶ月の薬剤費は約25万円になる。
公的制度で、医療費はどこまで軽減されるか
月25万円と聞くと絶望的に見える。だが日本には2つのセーフティネットがある。
①高額療養費制度
まず健康保険の高額療養費制度が機能する。年収約370〜770万円の一般的な会社員であれば、月の自己負担上限は約8〜9万円程度だ。
②指定難病 医療費助成制度
指定難病に認定されると、高額療養費制度の上にさらにもう一枚、公費助成が乗る。
月額の自己負担上限は所得に応じて以下のように設定されている。
| 年収目安 | 通常 | 高額かつ長期※ |
|---|---|---|
| 生活保護 | 0円 | 0円 |
| 〜約80万円 | 1,000円 | 1,000円 |
| 〜約160万円 | 2,000円 | 2,000円 |
| 約160〜370万円 | 6,000円 | 3,000円 |
| 約370〜810万円 | 10,000円 | 6,000円 |
| 約810万円以上 | 30,000円 | 20,000円 |
※高額かつ長期=月の医療費(10割)が5万円を超える月が年間6回以上ある場合に適用される特例。
タブネオスは月25万円超の薬剤費なので、この特例に該当する可能性が高い。年収800万円以上の方でも、月2万円以内に収まるケースがある。
※年収目安は市町村民税の所得割額から逆算した推計です。正確な区分は各自治体窓口でご確認ください。
制度には「完治」がない
指定難病は、その定義自体が「治療方法が確立していない疾患」だ。多くの場合、完治ではなく「寛解(症状が落ち着いた状態)」を目指す治療になる。
つまり医療費は長期にわたって続く。そして助成を受け続けるには毎年更新申請が必要だ。更新を忘れると助成が途切れる。制度を正しく使い続けることが、家計防衛の第一歩になる。
それでも残る負担がある
制度をフル活用しても、カバーされない部分がある。
- 通院の交通費
- 助成対象外の医療機関での費用
- 仕事への影響による収入減少
- 日常生活のサポート費用
特に「収入減少」は深刻だ。ANCA関連血管炎は倦怠感・しびれ・腎機能低下などの症状が出る。重症期は就労が困難になるケースもある。特に自営業やフリーランスは、休職制度がない。収入が止まっても、生活費は止まらない。
民間保険は、診断後では入れない
ここからが、FPとして正直に伝えたい部分だ。
相談にいらっしゃる方の中に、指定難病の診断を受けた方がいる。そのとき初めてその病名を知ることがある。その場で調べる。そして気づく。
診断後は、民間保険への新規加入そのものが難しくなる。医療保険でも条件付き承諾や部位不担保になることがあり、就業不能保険は加入できないケースも少なくない。
できることが、限られてしまう。
「保険不要論」に、ひとつだけ言いたいこと
「高額療養費があるから民間保険は不要」という意見がある。制度の仕組みを理解した上での発言なら、一定の合理性はある。
実際、日本の公的制度はかなり強い。それは事実だと思う。
ただ、一つだけ伝えたいことがある。
今日Googleで急上昇した「タブネオス」という言葉を、あなたは今日初めて知ったかもしれない。私も今日調べた。ANCA関連血管炎という病気を、昨日まで知らなかった人がほとんどだろう。
難病は予告なく来る。診断の瞬間から、選べる保険の選択肢が一気に狭まる。
制度は助けてくれる。でも制度が助けてくれるのは、診断された後の話だ。
民間保険が意味を持つのは、まだ何も起きていない「今」だ。
健康なうちに確認しておきたいこと
- 今の医療保険に通院給付金はついているか
- 就業不能保険に加入しているか
- 保険の告知内容に問題がないか
これらは、健康なうちにしか整えられない。
監修:かながわFP相談所 FP金川
※本記事は一般的な制度の情報提供を目的としており、個別の医療・保険アドバイスではありません。制度の詳細は各自治体窓口にご確認ください。
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かながわFP相談所(奈良県橿原市)は保険・NISA・住宅ローン・ライフプランを中立な立場でサポートする独立系FPです。橿原市・奈良市・大和高田市・桜井市など奈良県全域+全国オンライン対応。
この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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