正義を貫くたびに、デビルマンのサイフは泣いている。保険が教えてくれる、自己犠牲の切ない境界線。

デビールと叫んで変身するあの瞬間、私はいつも、ヒーローとしての高揚感より一歩手前で立ち止まってしまいます。

バリバリと音を立てて裂けるTシャツ。それは不動明という一人の青年が、日常を、ささやかな財産を捨てて戦場へ向かう儀式です。でも、その儀式のたびに財布から数千円が消えていく。この残酷な事実に、私たちはもっと向き合っていい。

もし彼が私の事務所に来たら

仕事で保険の相談を受けていたとき、ふとデビルマンのことが頭をよぎりました。

「変身で破れた服を、火災保険で補償できますか」

もし彼がそう聞いてきたら、私の答えは一つです。

まず、できません。

保険には故意免責という考え方があります。自分の意志でとった行動によって生じた損害は、補償の対象外になる。これはほぼすべての保険に共通する大原則です。

世界を救うために変身する。愛する人を守るために力を振るう。どれだけ高潔な動機であっても、保険という極めて現実的なシステムの前では、関係ない話になります。「あなたはその結果を分かっていてやったか」。保険が見ているのは、ただその一点だけです。

正義を貫くほど、生活がすり減っていく

不動明は牧村家に居候している身です。ただでさえ肩身の狭い立場で、毎回ボロボロの服で帰宅する。

彼は悪魔と戦っていただけではありませんでした。毎回の服の買い替え費用、つまり生活の維持という、もう一つの戦いにも直面していたはずです。

正義を貫けば貫くほど、自分の生活がすり減っていく。誰にも言えない孤独な持ち出し。私にはそれこそが、デビルマンの真の悲哀に見えます。

保険は、うっかりした失敗には手を差し伸べてくれます。でも、自らの意志で選んだ犠牲には一円も払ってくれない。それはまるで、自ら悪魔の力を手に入れ、孤独な戦いに身を投じた彼の生き様を、そのまま映し出しているようです。

私たちの「自己犠牲」も、同じ構造をしている

何かを守るために、何かを犠牲にする。その選択をするとき、人はたいていコストを過小評価します。

家計の管理も、ある意味では自分や家族の日常を守るための戦いです。でも、突発的な正義感や感情だけで動くと、保険も国も助けてくれない「自己責任という名の荒野」に放り出される。

デビルマンの破れたTシャツは、静かに問いかけています。

あなたが守りたいもののために、どれだけの持ち出しを覚悟しているか。そして、その犠牲は本当に持続可能か。

美樹ちゃんにお願いして伸縮性のある素材に変えてもらう。あるいは、変身の前に一瞬だけ脱ぐ。そんな、あまりに人間臭い工夫こそが、実は長い戦いを続けるために一番必要なライフプランニングだったのかもしれません。

かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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