がん保険、出た人・出なかった人。同じ家庭でほぼ同時に起きた現実

年末年始、夫婦でそれぞれの病院にいた

2025年12月20日、私は膀胱がんの告知を受けた。

年末年始を入院と手術で過ごした。結果は良性だった。がんではなかった。

ほっとした。でもがん保険は出なかった。(当時の冷や汗をかいた体験談はこちら)

その翌月、2026年1月28日。今度は妻が乳がんの確定診断を受けた。

浸潤がん。こちらは本物だった。保険金は出た。

夫は「がんと告知されたが良性だったから保険が出なかった」。
妻は「がんだったから保険が出た」。

同じ時期に、同じ家の中で、まったく逆の現実が起きた。

これはその記録だ。

告知の日、FPである夫は保険証券を取り出した

妻への告知に立ち会い、帰宅してから保険証券を取り出した。

私はFPだ。保険の相談を1000件以上受けてきた。がん保険の説明も、何度もしてきた。

それでも手が少し震えていた。

「プロなんだから落ち着け」と自分に言い聞かせながら、証券を広げた。

診断の内容と、保険金が出るまで

診断名は浸潤がん。上皮内がんではなかった。

保険的に言えば「フルで給付が出る」側だ。上皮内がんだと給付が制限される保険も多い中、浸潤がんの診断は2社合計で診断給付金200万円が支払われることを意味した。(参考:がん保険なのに給付金が出ない理由|診断給付金・上皮内がんの落とし穴)

ただし、診断書を取得して保険会社に提出して、実際に振り込まれるまでには時間がかかる。治療は先に始まる。その間の立て替えも含めて、手元の現金がどれだけあるかが最初の関門だ。

放射線治療が始まった。毎日、病院へ。

治療は放射線治療へと移行した。

平日は毎日通院する。妻の身体には、照射位置を示すマーカーで印がつけられている。水性だからすぐ消える。毎日消えて、毎日また引き直される。それを繰り返しながら、毎日病院へ通っている。

毎日通院できるということは、毎日仕事を休むということだ。

ここで傷病手当金が動く。給与の3分の2が支給される制度だ。ただし上限は1年6ヶ月。放射線治療が終わっても、その後ホルモン療法が5年続くとしたら、傷病手当金が終わった後の収入をどう確保するかという問題が残る。

ホルモン療法が始まった。関節が痛い。

放射線治療と並行して、ホルモン剤の服用が始まった。

副作用として関節が痛い。毎日の生活に影響が出ている。

ここで多くの人が誤解する落とし穴がある。

「関節が痛くて仕事ができない」は、就業不能保険の給付対象にならないケースが多い。就業不能保険は「まったく働けない状態」が条件になっていることが多く、副作用による体調不良は認定されないことがある。

ホルモン療法の副作用は、明確な「働けない」状態を作りにくい。じわじわと生活の質を下げながら、でも給付の定義には届かない。ここが盲点だ。

ホルモン療法5年で、2社の保険の差が出た

妻の保険は2社でかけていた。

A社の診断給付金は、再発・新発・がん治療継続中であれば1年毎に再給付される設計だ。ホルモン療法もがん治療として対象になる。このまま5年ホルモン療法が続けば、毎年100万円の給付が積み上がっていく計算だ。

ただしA社には入院・手術・放射線治療への月々の治療給付は加入していない。設計の問題だ。

B社は初年度に診断給付金100万円が出た。2年目以降、ホルモン療法では診断給付金は出ない設計になっている。月々の治療給付もホルモン剤では通常の半額になる。

ただし半額でも5年間毎月受け取り続ければ、トータルでは大きな金額になる。B社が弱いわけではない。設計の方向性が違うだけだ。

A社は「長く治療が続くほど積み上がる」設計。B社は「治療の種類に関わらず毎月一定額が出続ける」設計。どちらが有利かは、治療の内容と期間によって変わる。

乳がんのホルモン療法のように長期治療が見込まれる場合は、A社型の再給付設計が結果的に大きくなりやすい。

FPとして後悔していること

正直に書く。

B社の保険は、ホルモン療法に弱かった。加入時にそこまで細かく確認していなかった。

プロのはずの自分が、自分の妻の保険で見落としがあった。

A社をもっと手厚くしておくべきだったと、今は思っている。

これを読んでいる方に伝えたいことはひとつだ。

がん保険を選ぶとき「診断給付金の金額」だけを見ていないか。

再給付の条件、ホルモン療法や放射線治療など長期治療への対応、月々の治療給付の対象範囲。ここを確認せずに選ぶと、いざという時に「出ない」「思ったより少ない」という現実に直面する。

妻の治療はまだ続いている。ホルモン剤を飲みながら、関節の痛みと付き合いながら、それでも毎日を送っている。

FPである夫にできることは、せめてお金の不安を取り除くことだ。そのために保険はある。

あなたの保険は、この3つに即答できますか

ここまで読んで「自分の保険はどうなんだろう」と思った方も多いはずだ。

相談に来られる方の多くが「入っているけど中身はよく分かっていない」状態だ。

ホルモン療法は給付対象か。
診断給付金の再給付条件はどうなっているか。
上皮内がんと浸潤がんで給付額は変わるのか。

この3つに即答できる人は、ほとんどいない。

乳がんと診断されたら、まず確認すること

診断直後に確認すべきことを整理する。

加入しているがん保険の診断給付金の条件と金額。上皮内がんと浸潤がんで給付額が変わる保険が多い。

ホルモン療法・放射線治療など、自分が受ける治療が給付対象かどうか。

診断給付金の再給付条件。1年毎か2年毎か、ホルモン療法継続中でも対象かどうか。

傷病手当金の受給資格と期間。勤務先の健保組合に確認する。

これらを自分で確認するのが難しい場合は、FPに相談することで整理できる。

妻のように「診断されてから確認する」では、間に合わない部分もある。

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この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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