高額療養費制度が2026年8月から変わる──自己負担が増える人・増えない人をFPが整理した
2026年8月、高額療養費制度が変わる
少し前に膀胱腫瘍の手術を経験しました。2回の入院で、高額療養費制度には本当に助けられました。
だからこそ、今回の改正は他人事ではありません。
2026年8月から高額療養費制度の自己負担限度額が引き上げられることが決定しました。2025年12月に閣議決定され、2026年4月に予算が成立しています。「改悪」という言葉がSNSで飛び交っていますが、何がどう変わるのかを整理します。
この記事でわかること
- 2026年8月からの自己負担上限額引き上げの具体的な金額(年収別)
- 2027年8月に予定されている所得区分の細分化と、最大38%増になる対象層
- 新設される「年間上限」の仕組みと、負担が増えない「多数回該当」のルール
- 大企業の「組合健保」にある付加給付の重要性。法律の上限よりさらに安くなるケース
高額療養費制度とは何か、まず基本を確認する
高額療養費制度は、1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。
たとえば年収約370万〜770万円の会社員が入院して医療費が100万円かかった場合、3割負担の30万円を窓口で支払うのではなく、自己負担限度額の約8万7000円までで済みます。残りは後から払い戻されます。
現行(〜2026年7月)の自己負担限度額(70歳未満)
| 所得区分 | 自己負担限度額(月額) |
|---|---|
| 区分ア(年収約1160万〜) | 252,600円+(総医療費-84.2万)×1% |
| 区分イ(年収約770万〜1160万) | 167,400円+(総医療費-55.8万)×1% |
| 区分ウ(年収約370万〜770万) | 80,100円+(総医療費-26.7万)×1% |
| 区分エ(年収約370万以下) | 57,600円 |
| 区分オ(住民税非課税) | 35,400円 |
この上限額が2026年8月から引き上げられます。
2026年8月から何が変わるのか(第1弾)
第1段階として、すべての所得区分で月額の自己負担限度額が引き上げられます。
2026年8月からの引き上げ額(月額)
| 所得区分 | 引き上げ額 |
|---|---|
| 区分ア(年収1160万〜) | +17,700円 |
| 区分イ(年収770万〜1160万) | +11,700円 |
| 区分ウ(年収370万〜770万) | +5,700円 |
| 区分エ(年収370万以下) | +3,900円 |
| 区分オ(住民税非課税) | +1,500円 |
※中間所得層(区分ウ)が最も影響を受ける人数が多い見込みです。
同時に新設されるのが**「年間上限」**の仕組みです。1年間(8月から翌7月)の自己負担合計が一定額を超えた場合、それ以上の負担は不要になります。月々の上限が上がりながらも、年間トータルにはキャップをかけるという設計です。
多数回該当(直近12ヶ月に3回以上上限に達した場合、4回目から上限が下がる仕組み)は据え置きとなります。長期治療中の方の負担が急増しないよう配慮されています。
2027年8月からは所得区分が細分化(第2弾)
第2段階として、2027年8月から所得区分が現行の5区分から12区分に細分化されます。
最大の注意点:
年収約650万〜770万円の層は、月額の上限が現行の約8万円から約11万円(約38%増)へ引き上げられる見込みです。
現行制度では年収370万円の人と770万円の人が同じ区分に入っていました。これを細分化することで「負担能力に応じた負担」を実現するという趣旨です。
改正で負担が増える人、増えない人
- 負担増が小さい人:住民税非課税世帯。引き上げ幅は月1,500円に抑えられ、外来の年間上限も新設されます。
- 長期療養中の人:多数回該当のルールは据え置きのため、すでに上限に達している月が多い方の負担は急増しません。
- 影響が大きい人:年収370万〜770万円で、年に1〜2回入院するような方。月5,700円の引き上げが直接響きます。
マイナ保険証との組み合わせで窓口負担を抑える
高額療養費制度の自己負担が増えるからこそ、使える手段を組み合わせておくことが重要です。
マイナ保険証を使ってオンライン資格確認を行えば、限度額適用認定証の申請なしに最初から限度額内の支払いで済みます。改正後の新しい上限額であっても、窓口での一時的な立て替えを避けられる点は変わりません。
私自身の入院時もマイナ保険証を使って、申請なしで限度額内の支払いに収まりました。制度が変わっても、この使い方は有効です。
マイナ保険証と高額療養費の組み合わせについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
大企業の「組合健保」は、さらに自己負担が少ない可能性がある
ここまで解説した制限額は、主に国民健康保険や協会けんぽ(中小企業など)の基準です。
しかし、大企業や特定の業界が独自に運営している**「健康保険組合(組合健保)」**の場合、さらに強力な制度が存在することがあります。
【重要】付加給付(ふかきゅうふ)の有無を確認してください
一部の健康保険組合では、法律で決まった高額療養費に上乗せして払い戻しを行う「付加給付」という制度があります。
- 例:1ヶ月の自己負担がどれだけ高くなっても、最終的な支払いは一律20,000円〜25,000円まで。
※お勤め先の健康保険組合のウェブサイトや「しおり」で「一部負担還元金」などの名称で記載されています。
もしこの「付加給付」がある組合に加入しているなら、2026年の制度改正で法律上の上限額が上がったとしても、**あなた自身の最終的な支払額は変わらない**可能性があります。
医療保険の見直しをする前に、まずはご自身が「協会けんぽ」なのか「組合健保(付加給付あり)」なのかを必ずチェックしてください。ここを確認せずに保険を手厚くするのは、非常にもったいない判断です。
熱中症で入院した場合も高額療養費制度の対象です。2026年8月からの改正内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
医療保険の見直しを検討すべきか
今回の改正で「高額療養費制度があれば医療保険はいらない」という考え方に揺らぎが生じています。
上限が上がるということは、同じ治療でも自己負担が増えるということです。加えて、差額ベッド代・食事代・交通費などは制度の対象外です。これらは改正に関係なく全額自己負担です。
自己負担の増加分を保険でカバーするかどうかは、手元の貯蓄と月々の保険料のバランスで判断することになります。一律に「見直すべき」とも「このままでいい」とも言えません。
ご自身の状況を一度整理したい場合は、ご相談ください。
この記事を書いたFPに直接相談できます
かながわFP相談所(奈良県橿原市)は保険・NISA・住宅ローン・ライフプランを中立な立場でサポートする独立系FPです。医療保険の見直しや高額療養費の試算はお気軽にご相談ください。橿原市・奈良市・大和高田市・桜井市など奈良県全域+全国オンライン対応。
この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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