熱中症で仕事を休んだ時の給付金まとめ│有給・傷病手当金・高額療養費・熱中症保険を徹底解説

【2026年7月 データ更新】1週間の熱中症搬送が今年初の1万人超
総務省消防庁の発表によると、2026年7月13日〜19日の1週間で、全国の熱中症による救急搬送人員は10,857人(速報値)となり、今年初めて1万人を超えました(出典:総務省消防庁「熱中症情報」)。職場に限っても、厚生労働省の発表では2025年の熱中症による死傷者数は1,803人(前年の1,257人から546人増)で統計開始以来最多を更新しました。一方で死亡者数は31人から19人へ減少しており、厚生労働省は重篤化防止対策が進んだ結果と分析しています(出典:厚生労働省「令和7年『職場における熱中症による死傷災害の発生状況』(確定値)」)。「暑さで仕事を休まざるを得ない」事態は、もはや誰にでも起こり得ます。
📖 この記事でわかること
- 熱中症で休んだ時に使える制度の全体像
- 仕事中の熱中症は労災。傷病手当金は使えず、しかも労災のほうが手取りは大きい
- 傷病手当金は「給与の2/3」ではなく「標準報酬月額の2/3」という落とし穴
- 高額療養費制度・熱中症保険との組み合わせ方
熱中症で仕事を休んだら何が使えるか
今年も熱中症警戒アラートが出る季節になった。
「エアコン代がもったいない」と我慢して熱中症で倒れた場合、仕事を休むことになる。その時に使える制度を知っているかどうかで、家計へのダメージが大きく変わる。
使える制度は主に5つだ。労災保険、有給休暇、傷病手当金、高額療養費制度、熱中症保険。それぞれ使える条件と金額が違う。
ただしその前に、必ず確認しておきたい分岐がある。その熱中症は、仕事中(または通勤中)に起きたのかという点だ。ここで使える制度がまるごと入れ替わる。順番に整理する。
仕事中・通勤中の熱中症は労災|傷病手当金は使えない
先に結論を書く。仕事中や通勤中に起きた熱中症は労災であり、健康保険の傷病手当金は使えない。
傷病手当金の支給要件は「業務外の事由による病気やケガ」だからだ(出典:協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」)。業務上や通勤途中の病気・ケガは労災保険の対象になり、窓口は労働基準監督署に変わる。
熱中症は屋外作業や製造・物流の現場で起きやすい。「仕事中に倒れたのに傷病手当金を申請しようとしていた」という取り違えは、十分に起こり得る。
労災のほうが手取りは大きい
取り違えると損をするのは、労災のほうが補償が手厚いからだ。
| 項目 | 労災保険 (仕事中・通勤中) | 傷病手当金 (業務外) |
|---|---|---|
| 休業中の補償 | 給付基礎日額の60% +休業特別支給金20%=計80% | 標準報酬日額の3分の2(約67%) |
| 治療費 | 窓口負担なし (労災指定医療機関の場合) | 健康保険の3割負担 |
| 最初の3日間 | 業務災害なら事業主に休業補償の義務 | 待期期間で支給なし |
| 請求先 | 労働基準監督署 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
差が大きいのは治療費だ。健康保険を使えば3割の自己負担が発生し、高額療養費制度を使っても月数万円は手元から出ていく。一方、労災の療養(補償)給付なら、労災指定医療機関での治療は窓口負担なしで受けられる。
なお業務災害の場合、待期3日間についても労働基準法にもとづき事業主に休業補償の義務がある。通勤災害にはこの事業主補償はない。
2025年6月から、職場の熱中症対策は事業者の義務
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則(第612条の2)により、職場の熱中症対策は罰則付きで事業者の義務になった(厚生労働省「職場における熱中症予防情報」)。
対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間以上の作業が見込まれる場合だ。事業者には、①熱中症のおそれがある人を早期に発見するための報告体制の整備、②作業からの離脱・身体の冷却・医療機関への搬送といった重篤化を防ぐ手順の作成、③それらの関係作業者への周知が求められる。
つまり「暑いのは自己責任」という整理は、もう成り立たない。体調の異変を申し出られる仕組みを用意することは、会社側の義務である。
※労災の請求は労働基準監督署への手続きであり、請求書類の作成代行は社会保険労務士の業務範囲となる。当方でお伝えできるのは、制度の全体像と家計への影響の整理までである。
熱中症で1〜3日休んだ場合│有給休暇の使い方
熱中症で数日休む程度であれば、有給休暇を使うのが最もシンプルだ。給与がそのまま支払われるため、収入への影響がない。
ただし有給残数には限りがある。温存しておきたい場合は次の選択肢を考える価値がある。
熱中症で4日以上休んだら傷病手当金が動く
連続して4日以上仕事を休んだ場合、健康保険の傷病手当金が使える。ここからは業務外で熱中症になった場合の話だ(仕事中・通勤中なら前章の労災になる)。最初の3日間は待期期間として支給されないが、4日目から支給が始まる。
支給期間は最長1年6ヶ月だ。
なお、休職が長引くと問題になるのは傷病手当金の額だけではない。社会保険料や住民税の支払いは休んでいる間も続くため、収入が減るのに出ていくお金は止まらない。この全体像は休職したらお金はどうなる?給料・傷病手当金・払い続ける出費で解説している。
申請は加入している健康保険組合または協会けんぽに行う。医師の意見書が必要になるため、受診時に「傷病手当金の申請をしたい」と伝えておくとスムーズだ。
傷病手当金は「給与の2/3」ではない│標準報酬月額の落とし穴
よく「給与の2/3がもらえる」と説明されるが、正確には「標準報酬月額の30分の1(日額)×3分の2」だ。
標準報酬月額は実際の給与とズレることがある。残業代や各種手当が多い人は実際の手取りより標準報酬月額が低いケースがある。「給与の2/3」と思っていたら実際はもっと少なかったという現実が起きうる。
自分の標準報酬月額は給与明細や健康保険証で確認できる。休職前に一度確認しておくことをすすめる。
傷病手当金から引かれるもの│社会保険料・住民税の現実
傷病手当金から引かれるものがある。
社会保険料(健康保険・厚生年金)は休職中も引き続き徴収される。傷病手当金自体は非課税のため所得税はかからない。ただし住民税は前年所得をベースに計算されるため、翌年も請求が来る。休職中でも住民税の支払いは続く。
実質的な手取りは「標準報酬月額の2/3から社会保険料を引いた額」になる。思ったより少ないというのが現実だ。
長期休職になる場合は、この収入減を想定した資金計画が必要になる。
熱中症で入院したら高額療養費制度は使えるか
熱中症は重症化すると入院になるケースもある。その場合は高額療養費制度が使える。
1ヶ月の医療費の自己負担が一定額を超えた分は払い戻される。年収約370万〜770万円の層であれば自己負担の上限は約8万7000円だ。
ただし2026年8月からこの上限額が引き上げられる。詳しくはこちらの記事で解説している。
マイナ保険証を使えば限度額適用認定証の申請なしに最初から上限内の支払いで済む。入院が決まったらマイナ保険証を持参することを忘れずに。
熱中症保険とは│検討すべき人の条件
近年、熱中症に特化した少額短期保険が登場している。熱中症と診断されただけで一時金が出る商品もある。
検討する価値がある層は以下の通りだ。
屋外での作業が多い仕事をしている人。高齢の親がいて熱中症リスクが高い人。有給残数が少なく収入減が直撃する人。
掛け金が少額なため気軽に入れる反面、補償範囲が限定的な点は加入前に確認が必要だ。
熱中症の備えは組み合わせで考える
労災保険、有給休暇、傷病手当金、高額療養費制度、熱中症保険。これらは単独で考えるのではなく、状況に応じて組み合わせるものだ。まず「仕事中だったか」を確認し、そこから使える制度を選ぶのが順番になる。
知っているかどうかだけで、同じ熱中症でも家計へのダメージが大きく変わる。
エアコンを適切に使って熱中症を予防することが最優先だが、万が一の時の備えも整えておくことをすすめる。
この記事を書いたFPに直接相談できます
→ 2026年猛暑予想|家計を直撃する3つのリスクと対策【FP解説】

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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