フラット35が3%を超えた。それでも固定金利を選ぶべき人は?

フラット35が3%を超えた2026年6月の住宅ローン事情を解説。固定金利と変動金利の違い、固定を選ぶべき人の特徴、子育てプラス制度についてFPが解説するアイキャッチ画像。

2026年6月、フラット35の最低金利が3.21%になった。現行制度で初の3%超えだ。

半年前の1月は2.08%だった。たった半年で1%以上も上がったことになる。住宅ローンの金利が半年で1%動くのは異例のペースだ。

「固定金利がこんなに高いなら、変動金利のほうが得じゃないか」——この声は、相談現場でもここ数ヶ月で急激に増えた。気持ちはわかる。だが、その判断を金利の数字だけで下すと、後で痛い目を見る人が出る。

今日はフラット35に何が起きているのかを整理し、それでも固定金利を選ぶべき人はどういう人なのかを、FPの立場で正直に書く。

フラット35に何が起きているのか——「逆ザヤ」の正体

まず、なぜこんなに急に上がったのか。

フラット35の金利は、住宅金融支援機構が発行する「機構債」の利回りをもとに決まる。簡単に言えば、機構が市場からお金を調達するコスト(機構債の利率)に、事務コストを乗せた金額が、利用者に提示されるフラット35の金利になる。

ところが2025年6月頃から、異常な事態が続いていた調達コストである機構債の利率が、貸出金利であるフラット35の金利を上回る「逆ザヤ」状態に陥っていたのだ。

原価より安く売っている状態だ。普通の民間企業なら即座に値上げするところだが、住宅金融支援機構は国民の住宅取得を支援する公的機関。急激な金利転嫁を避けるために、しばらく赤字を吸収し続けた。

だが限界はある。2026年に入ってからも長期金利の上昇が続き、逆ザヤ幅はさらに拡大した。赤字で貸し続けるわけにはいかない。その結果、2026年3月以降、抑えていた分が一気に反映され、急ピッチの金利上昇が始まった。

つまり今のフラット35の急騰は「今まで上げなかった分のツケが回ってきた」結果だ。金融市場の異変ではなく、むしろ「正常化」と言ったほうが正確かもしれない。

金利の数字だけで並べると「変動一択」に見える

では、今の金利水準を冷静に並べてみる。

フラット35(固定・35年):3.21%
変動金利(ネット銀行の最優遇):0.9%前後

差は2.3%以上ある。3,000万円を35年で借りた場合、毎月の返済額は固定で約11.9万円、変動で約8.3万円。月3.6万円、年間43万円以上の差だ。

この数字だけ見れば、「変動一択」に見えるのは当然だろう。

だが、ここで終わる FPは信用しないほうがいい。

「変動が安い」のは”今”の話でしかない

変動金利には一つ、取扱説明書に書いてあるのに多くの人が読み飛ばす事実がある。金利は変わる

日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、その後も段階的に政策金利を引き上げてきた。2025年12月には0.75%に到達している。変動金利はこの短期金利に連動して動く。今は0.9%前後だが、政策金利がさらに上がれば、変動金利も上がる。

問題は、「いつ」「どれだけ」上がるか、誰にも正確には予測できないということだ。

フラット35の3.21%は確かに高い。だが、35年間この金利で固定される。一方、変動の0.9%は35年間続く保証がどこにもない。これは「安さ」ではなく「不確実性」を買っているのだということを、まず理解しておく必要がある。

それでも固定金利を選ぶべき人——3つの条件

では、3%超えのフラット35を「それでも選ぶ理由がある」のはどんな人か。立場をはっきりさせる。

①収入の変動に弱い人

自営業・フリーランス・契約社員など、収入が安定しにくい職業の人。変動金利が上がったときに「繰り上げ返済で逃げる」という選択肢が取りにくい。毎月の返済額が確定しているフラット35は、収入のブレに対するバッファになる。

②家計に余裕がない人

住宅ローンを組んだ後の貯蓄が生活費の6ヶ月分を切るような状態で変動金利を選ぶのは、正直に言えば危うい。金利が上がったとき、返済額の増加を吸収する余力がないからだ。「今安いから」で変動を選び、数年後に金利が上がって家計が苦しくなる——私の相談経験でも、こうしたケースは珍しくない。

③「金利を気にし続けたくない」人

これは性格の問題であって、損得の問題ではない。変動金利を選ぶと、多くの商品では半年ごとの金利見直し、5年ルール、125%ルールといった仕組みを理解し、金利動向をウォッチし続ける必要がある(一部のネット銀行ではこれらのルールが適用されない商品もあり、その場合は金利上昇が返済額に即反映される)。それが苦にならない人は変動でいい。だが「住宅ローンのことは決めたら忘れたい」という人には、固定金利の「決めたら35年間同じ」という安心感には値段分の価値がある。

逆に言えば、これらの条件に当てはまらない人——会社員で収入が安定し、貯蓄に余裕があり、金融リテラシーも高い人——は、変動金利のリスクを取っても対処できる可能性が高い。

大事なのは「どっちが得か」ではなく「自分はどっちのリスクを取れるか」だ。

ざっくり整理すると、こうなる。

項目フラット35(固定)変動金利
2026年6月の金利水準3.21%0.9%前後
返済額35年間変わらない金利に応じて変動する
将来の予測不要金利動向を追い続ける必要あり
金利上昇リスクなし(確定済み)あり(将来の上昇分は自己負担)
向いている人安定重視・収入に波がある人コスト重視・余裕資金がある人

知らないと損する「子育てプラス」——固定金利でも下げられる

フラット35が3%を超えたと聞いて「もう固定は無理」と思った子育て世代に、一つ知っておいてほしい制度がある。

住宅金融支援機構の「子育てプラス」だ。夫婦のいずれかが40歳未満、または18歳未満の子どもがいる世帯を対象に、フラット35の金利が引き下げられる。

引き下げ幅は子どもの人数で変わる。子ども1人なら当初5年間0.25%、2人なら0.50%、3人なら0.75%の引き下げだ。さらに長期優良住宅などの条件を満たせば、引き下げ幅はさらに拡大する。

仮に3.21%のフラット35で、子どもが2人、長期優良住宅を購入した場合。子育てプラスと住宅性能による引き下げを合わせると、当初5年間は2%台前半まで下がる計算になる。3%超えの見出しだけ見て諦めるのは、もったいない。

ただし、この引き下げは「当初5年間」や「当初10年間」に限定されるものが多い。引き下げ期間が終われば元の金利に戻る。35年間ずっと引き下げが続くわけではない点は、正確に理解しておく必要がある。

「売却前提で家を買う」時代が来ている

話が少し変わるが、住宅ローンの世界で一つ、象徴的な動きがあった。

住信SBIネット銀行が2026年6月1日から、返済最終日に元金の50%を一括で支払うタイプの住宅ローンの提供を始めた。返済期間中にマンションを売却し、その売却益で残りの元金をまとめて返済する——いわば「売却を前提にした住宅ローン」だ。

対象は東京23区・大阪市・横浜市・川崎市にある1億円以上のマンション。年収1,000万円以上が利用条件だ。奈良県の相談者にとって直接使う商品ではないだろう。

だが、注目すべきは商品の中身ではなく「こういう商品が成立する時代になった」という事実のほうだ。

かつて住宅は「一生住む」前提で買うものだった。住宅ローンも「完済するまでコツコツ返す」設計が基本だった。それが今、「途中で売って乗り換える」ことを前提にしたローンが大手銀行から出てくる。住宅ローンの常識そのものが変わりつつある。

これは固定か変動かという選択以前に、「自分にとって家とは何か」を考える必要がある時代に入ったことを意味している。

結論——「高いから固定はダメ」は思考停止

フラット35の3%超えは事実だ。変動金利との差は歴然としている。それでも、固定金利を選ぶべき人はいる。

金利の数字だけを比べて「変動が得」と即答するのは、保険の値段だけ見て「安いほうがいい」と言うのと同じだ。大事なのは「何を守るために、どのリスクを取るか」であって、数字の大小ではない。

住宅ローンは家計の中で最も大きな固定費だ。ここの設計を間違えると、教育費にも老後資金にも波及する。だからこそ「今安いから」「今高いから」の一時点の数字ではなく、自分の職業・家族構成・貯蓄・性格を見て判断してほしい。

3%の固定金利を「高い」と切り捨てるのは簡単だ。だが、35年間返済額が変わらないという安心を「高い」と言い切れるのは、変動金利が上がっても対処できる人だけだ。

住宅ローンは投資ではない。家族が住む場所を守るための資金調達手段だ。だから金利だけでなく、「毎月の返済額が変わるかもしれない」と思いながら眠れるかどうかも、判断基準に入れていい。

住宅ローン、固定か変動か——一緒に整理しませんか

住宅ローンは「金利が安いほう」で選ぶと、後で取り返しがつかないことがあります。変動か固定か、借入額は適正か、団信の選び方は——判断材料が多いからこそ、一度プロと整理してみませんか。保険を売るための相談ではなく、家計全体のバランスから一緒に考えます。

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かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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