仙薬を手に入れたら生命保険は解約すべきか?FPが地獄楽を本気で考えてみた

地獄楽を観ていて、ふと思いました。
仙薬、本当に欲しいですか?
江戸時代。死刑囚の忍・画眉丸は「謎の島から仙薬を持ち帰れば無罪放免」という条件を幕府から提示されます。命がけで仙境に乗り込み、化け物だらけの島を生き抜く物語です。
不老不死の薬。人類が古来から夢見てきたもの。
でもFPとして冷静に考えると、手に入れた瞬間に別の地獄が始まります。
不老不死になったら、生命保険はどう考えるべきか
死亡保険金は「死亡したとき」に支払われます。
死なないことが確定しているなら、理論上は死亡保障は不要になります。
ただし現実の保険制度には「不老不死」という概念が存在しません。制度として想定されていないため、実務上どう扱われるかは別の話です。あくまで思考実験として聞いてください。
仮に「死なないことが完全に確定している」という前提なら、生命保険の死亡保障を継続するメリットはほぼありません。解約返戻金がある保険なら手元に資金が戻ってきます。その分を資産運用に回す方が合理的という判断は成り立ちます。
ただし入院保険・傷害保険は別の話
不老不死でも、怪我はします。痛みもある。入院も必要になる。
画眉丸を見ればわかります。彼は仙境で何度も深手を負い、瀕死になりながら戦い続けます。死なないだけで、ボロボロになることは普通にある。
入院保険・傷害保険は「死亡したとき」の保障ではなく「入院した日数」「怪我の程度」に応じて給付されます。不老不死であっても、戦闘で骨を折れば傷害保険は使えるし、入院すれば入院給付金は出ます。
死亡保障は見直し対象になっても、医療・傷害保障はむしろ必要性が残ります。
「不老不死ですか?」という告知項目は存在しない
ここが興味深いところです。
保険加入時には告知義務があります。現在の健康状態、既往症、職業などを正直に申告しなければなりません。
しかし保険会社の告知書に「あなたは不老不死ですか?」という項目はどこにもありません。
これは制度の盲点というより、制度設計の想定外です。保険制度そのものが「人は必ず死ぬ」ことを前提に構築されています。不老不死という概念を最初から織り込んでいない。だから告知項目に存在しないのは当然でもあります。
ただし職業告知は別の問題になります。画眉丸の職業は忍者、しかも元死刑囚です。「危険度の高い職業は加入制限あり、または割増保険料」という規定がありますが、忍者という区分は現代の告知書には存在しません。おそらく「武道家・格闘技関係」に近い扱いになるか、職業欄の記載に困ることになります。
樹化したらどうなるか
地獄楽では仙境の影響を受けた人間が「樹化」します。身体が植物と融合したような状態になり、完全に樹化すると動けなくなります。
まず「死亡」と認定されるかどうかが問題です。日本の死亡認定は医師が心停止・脳死などを確認して診断書を発行します。樹化した状態がこの基準に当てはまるかは非常に曖昧で、心臓が動いていれば死亡と認定されない可能性があります。
そうなると死亡保険金は出ません。
一方で、高度障害保険金の対象になる可能性があります。
一般的な生命保険の高度障害の定義には「両上肢の用を全く永久に失ったもの」「言語機能を全く永久に失ったもの」「終身常に介護を要するもの」などがあります。完全に樹化して身体機能を失った状態は、これらの定義に該当する可能性があります。ただし高度障害の認定は実務上かなり厳密であり、実際に支払われるかどうかは個別の状況と保険会社の判断によります。
「樹化は死亡か高度障害か」。保険会社の審査部門が最も困惑する案件かもしれません。
年金と相続も崩壊する
公的年金は長生きするほど受給総額が増える制度です。不老不死なら受給期間が数百年になります。1000年生きたエルフが年金を受け取り続けると8.2億円になるという計算は、フリーレンの記事で詳しく検証しています。
▶ 葬送のフリーレン|1000年生きたら年金は8.2億円?複利との差をFPが検証
相続は死なないので永遠に発生しません。財産が本人のところで止まり続け、子供や孫への資産移転が起きない。相続税はゼロですが、社会全体の富の流れが止まります。
まとめ
仙薬を手に入れたら、真っ先に保険の見直しが必要になります。
死亡保障は理論上不要になる一方、医療・傷害保障は残る。告知書に「不老不死」という概念はない。樹化したら高度障害保険金の対象になる可能性がある。
画眉丸は確認しなかったと思いますが。
なお、現実世界の保険見直しは命がけで島に渡る前に済ませておきましょう。
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この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
≫ 52歳、FP金川が病室で見た真実と、詳しい経歴はこちら