家計金融資産500兆円超。それでも日本人が豊かさを感じられない理由

2025年末、日本の家計が保有する株式・投資信託の合計が500兆円を超えた。
10年前の2015年末は258兆円だった。10年で倍増だ。NISAの拡充が追い風になり、「貯蓄から投資へ」という国の方針は数字の上では結果を出した。
では、あなたは豊かになっただろうか。
おそらく多くの人がこう感じているはずだ。「数字は増えている気がするが、生活は苦しくなっている」と。
この感覚は正しい。FPとして1,000件超の家計相談を受けてきた立場から、その構造を解説する。
「500兆円」は平均値ではなく総額だ
まず、根本的な誤解を解く。
500兆円は「日本の家計全体が持つ株式・投信の合計額」だ。1億2,000万人で割り算して「一人あたり約416万円」とはならない。
現実はこうだ。1億円の株式を持つ人と、100万円しか持たない人が混在している。その「合計」が500兆円だ。
金融広報中央委員会のデータでも、金融資産の分布は極端に偏っている。20代単身世帯の金融資産中央値は決して高い水準ではなく、平均値と中央値には大きな差があることが知られている。「日本人全員が豊か」ではまったくない。
500兆円の主役は高齢者だ
さらに重要な事実がある。この500兆円の多くを持っているのは高齢層だ。野村資本市場研究所の推計では、家計金融資産の過半を65歳以上が占めている。
つまりこういう構造だ。
- 高齢者:資産を多く保有している世帯が多い。一方で老後不安から消費に慎重な傾向もみられる。
- 若者・現役世代:給料は上がらない。手取りは減っている。NISAをやれと言われる。将来が不安。消費しない。
消費が回らないから経済も回らない。経済が回らないから給料も上がらない。将来不安はさらに強まる。この悪循環が、500兆円という数字の裏側に隠れている。
資産は増えた。なぜ生活は苦しいのか
「株価が上がって資産が増えた」という人でも、生活実感が豊かにならない理由がある。可処分所得が増えていないからだ。
給料が多少上がっても、以下が同時に上昇し続けている。
- 社会保険料(35年間で負担率が5ポイント超上昇)
- 物価(食料品・光熱費)
- 住宅価格(特に都市圏)→変動金利の「5年ルール」を過信していませんか?
- 教育費→iDeCoは教育費にも効く?節税と流動性リスクの本音
- 介護費用
収入の「入口」は少し広がったが、「出口」がそれ以上に広がっている。手元に残るお金は増えていない。証券口座の評価額は上がっても、今月の財布は苦しい。これが今の日本の家計の実態だ。
NISAだけでは人生設計にならない
「とりあえずNISA」という言葉が若者の間で広がっている。将来不安に駆られ、生活費を削ってでも積み立てる。その結果、旅行に行けない、勉強にお金をかけられない、恋愛や交際にコストをかけられない——という状況が生まれている。
投資は大切だ。しかし、NISAの積立残高だけが増えて、20代・30代の「人間としての資産」が細っていくなら、それは本末転倒だ。「NISA貧乏」の構造についてはこちらで詳しく解説している。
老後の備えとしてNISAと並行して検討されることが多い個人年金保険やiDeCoについても、「積み立てれば安心」ではなく、流動性リスクや出口戦略まで含めて設計する必要がある。個人年金保険を続けるべきか見直すべきか、判断基準をまとめた。
500兆円という数字は、確かに日本の家計が投資に向き合い始めた証拠だ。ただ、その数字が「誰の」「どんな」資産なのかを見ないまま、「日本は豊かになった」と読み違えるのは危険だ。
投資は大切だ。しかし本来は、住宅・教育・保険・老後資金まで含めたライフプランの一部として考えるべきものである。
証券口座の残高だけでなく、あなた自身の人生全体が豊かになっているか。それを定期的に確認することが、資産形成の第一歩ではないだろうか。
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かながわFP相談所(奈良県橿原市)は保険・NISA・住宅ローン・家計管理を中立な立場でサポートする独立系FPです。橿原市・奈良市・大和高田市・桜井市など奈良県全域+全国オンライン対応。

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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