ドル161円突破。S&P500やオルカンが増えて見える本当の理由

ドル161円。約2年ぶりの円安水準
2026年6月、ドル円相場が一時161円台を付けた。2024年7月以来、約2年ぶりの円安ドル高水準だ。
背景にあるのは、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的な姿勢だ。FRBは6月17日までのFOMCでFF金利を3.50〜3.75%に据え置いたが、政策担当者9人が年末までの利上げが必要と予想した。市場では9月までの利上げ確率を68%と織り込んでいる。
このニュースを受けて、「S&P500やオルカンの評価額が増えている」という声を聞くことが増えてきた。先日の記事でも触れたが、この「増えた」という感覚には、株価上昇だけでなく為替の影響が含まれている。今回はその円安が、家計や資産形成に具体的にどう響くのかを見ていく。
なぜ円安になっているのか
円安の大きな要因の一つが、日米の金利差だ。
お金は基本的に、より高い金利が期待できる国へ集まりやすい。現在、アメリカの政策金利は日本より高い水準にあり、投資資金がドルへ向かいやすい状況が続いている。
円を売ってドルを買う動きが積み重なれば、円安が進む。シンプルだが、これが基本構造だ。
為替は様々な要因が絡むため、将来を正確に予想することはできない。ただ、日米の金利差が円安・円高を考えるうえで重要な軸であることは、押さえておきたい。
S&P500やオルカンが「増えて見える」理由
例えば米国株の価値そのものが変わらなくても、ドル円が140円から160円になれば、円換算した評価額は自動的に増加する。
つまり資産額の増加は、株価上昇だけが理由ではない。円安による為替効果も上乗せされている。
NISAでS&P500やオルカンに投資している人は、運用成績を見るときに「株価」と「為替」の両方を分けて考える癖をつけておくといい。どちらが効いているかを把握しないと、相場が反転したときに混乱しやすい。
円安は家計にも直接効いてくる
円安は投資の話だけではない。日本は原材料やエネルギーの多くを輸入に頼っている。
円安が進むと、ガソリン代・電気代・食品価格・日用品などに影響が及びやすくなる。日々の値上がりは小さく見えても、年間で積み上げると家計への負担は決して軽くない。
具体的な数字で見てみる。2026年6月時点のレギュラーガソリン価格は全国平均169.7円/Lだ。政府の補助金で価格が抑えられている状態でこの水準であり、補助が縮小すれば一段の値上がりも想定される。月50L給油する家庭なら、10円/Lの上昇で年間6,000円の負担増だ。
電気代も同様だ。2025年の電気代家計平均は月10,962円で、前年から935円(9.32%)増えている。円安が進めば、輸入に頼るLNG(液化天然ガス)のコストを通じて、電気代にも数か月遅れで波及してくる。
資産が投資で増えていても、生活コストが同時に上がっていれば、体感としての豊かさは相殺される。ここを見落とすと、「資産は増えているのに生活が苦しい」という違和感の正体が分からないままになる。
円安だから投資をやめるべきか
結論から言えば、円安だけを理由に投資をやめる必要はない。
一方で、「これからも円安が続く」「いずれ必ず円高に戻る」といった予想を前提に資産形成を組み立てるのも危うい。為替の動きを当てることは、プロでも難しいとされている。
大切なのは、為替の方向性を当てにいくことではなく、円高でも円安でも崩れにくい資産配分を考えることだ。
相談の現場でも、円安局面になるたびに「今のうちに利益確定した方がいいか」という質問を受ける。だが、為替を見て売買タイミングを判断するのは、プロでも当たらないことが多い領域だ。むしろ「いつ円安が反転しても困らない配分になっているか」を確認する方が、よほど建設的な相談になる。
外貨建て保険を持っている人は要注意
円安局面で見落とされがちなのが、外貨建て保険だ。
ドル建ての終身保険や養老保険は、解約返戻金や満期金がドルベースで計算され、受け取り時の為替レートで円換算される。今のような円安局面で受け取れば為替差益が乗るが、逆に円高局面で受け取れば、保険料として払い込んだ元本を下回ることもある。
「今は円安で評価額が増えているから解約しよう」という判断は、一見合理的に見える。ただし、その保険が老後資金や教育資金など、特定の目的のために組んだものなら、目的の時期と為替のタイミングが一致するとは限らない。為替差益だけを見て早期解約すると、本来の保障や目的を手放すことにもなりかねない。
外貨建て保険を持っている人は、今回の円安を「儲かった」で終わらせず、契約内容と受け取り時期を一度確認しておくとよい。
日本円だけに偏っていないか、一度確認を
今回の円安局面で、「外貨資産を持っていてよかった」と感じた人もいるだろう。逆に、預金中心で資産のほとんどが日本円という人も少なくない。
円安だからといって、慌てて外貨建て商品に飛びつく必要はない。ただ、今回のような大きな為替変動は、自分の資産全体のバランスを見直すきっかけとしては悪くない。
見直す際は、漠然と「外貨を増やそう」ではなく、次の順番で確認するとよい。
- 今ある資産のうち、円建てと外貨建ての比率はどれくらいか
- その外貨建て資産は、いつ・何のために使う予定か
- NISA・外貨建て保険・外貨預金など、それぞれ為替の影響を受けるタイミングが違うことを理解しているか
NISAを使った投資信託や、目的によっては外貨建て保険なども含めて、それぞれがどんな役割を果たしているのかを理解したうえで考えることが大切だ。
まとめ
ドル161円という数字を見て、不安になった人もいるかもしれない。
しかし本当に大事なのは、円安や円高を予想して当てることではない。今回の円安は、家計への影響・NISA評価額への影響・資産配分への影響を、改めて確認する機会だ。
短期的な為替の動きに振り回されるのではなく、自分のライフプランに合ったバランスを考えていきたい。
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監修:かながわFP相談所 FP金川

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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