B’zのチャリティグッズを買ったら寄付金控除できる?ファンの「推し活」と税金をFPが解説
2026年8月10日、B’zが令和8年熊本地震の被災地へ3,000万円を寄付したと発表した。
原資は、2011年から販売してきたチャリティグッズの収益金だという。内訳は2024年度の保全収益金22,448,300円と、2025年度の収益金の一部。今回売れた分の売上がそのまま渡ったわけではなく、15年かけて積み上げてきた原資から充てられている。発表の中で、B’zはファンに向けて「温かいご協力あってのこと」と述べていた。
寄付先も公表されている。ピース・ウィンズ・ジャパンに2,000万円(医療・物資・入浴・ペット避難の支援)、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに1,000万円(緊急子ども用キット、子どもの居場所づくり、こころのケアなど)だ。
私もそのファンの一人だ。ライブに行き、グッズを買ってきた。だから素直に嬉しかった。自分が買ったTシャツの代金が、めぐりめぐって被災地に届いている——そう思えるのは、悪くない気分である。
そのうえで、職業柄どうしても気になったことがある。
あのグッズ代は、寄付金控除の対象になるのだろうか。
結論から書く。ならない。ただし、それは「推し活が支援になっていない」という意味ではまったくない。ここを分けて理解しておきたい。
結論:チャリティグッズの購入では、寄付金控除は受けられない
寄付金控除の対象になるのは、国税庁が定める「特定寄附金」だ。国や地方公共団体、公益法人などへの寄附がこれにあたる。
ただし、そこから除かれるものがある。国税庁は「寄附をした人に特別の利益がおよぶと認められるもの」を対象外としている。
そして、そもそもの話として——グッズの購入代金は「寄附金」ではない。商品の対価である。
Tシャツを買えばTシャツが手元に残る。タオルを買えばタオルが届く。これは売買であって、寄附ではない。だから寄付金控除という制度の土俵に、最初から乗っていない。
「チャリティグッズの収益が被災地支援に使われるのだから、実質的には寄付ではないか」と思うかもしれない。気持ちは分かる。だが税制上は、誰が誰に対して支出したかで判断される。
今回の件を、その視点で分解するとこうなる。
- ファン → B’z側(販売主体):グッズの代金を支払い、グッズを受け取る。これは売買
- B’z側 → ピース・ウィンズ・ジャパン/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン:3,000万円を支出する。これが寄付
この2つは、つながってはいるが、別の取引である。寄付をしたのはB’z側であって、ファンではない。だからファンの側で寄付金控除の話にはならない。
では、推し活は支援になっていないのか
ここが本題である。
なっている。それも、かなり確実な形で。
今回動いたのは3,000万円だ。この原資には、2011年から販売されてきたチャリティグッズの収益金が使われている。グッズが売れ、その収益が積み上がってきたからこそ、今回の支援につながっている。
寄付金控除が受けられないことと、支援が届いていないことは、まったく別の話だ。控除は税制の話であり、支援は現実の話である。混同すると、おかしな結論になる。
むしろ、この形には強みがある。
- まとまった金額になる——多くのファンの購入が積み重なることで、3,000万円というまとまった支援につながる
- 続く——B’zは2011年からチャリティグッズの販売を続けている。単発の寄付ではなく、災害が起きたときに動かせる原資が積み上がっている仕組みになっている。今回の充当元が2024年度・2025年度の収益だったことが、それをよく表している
- 参加のハードルが低い——「寄付をする」と身構えなくても、好きなアーティストのグッズを買うだけで結果的に原資になる
「寄付をしたことがない」という人は多い。だが「推しのグッズを買ったことがある」人は、その何倍もいるはずだ。後者のほうが、支援の入口としては広い。
控除も受けたいなら、別で寄付するという選択肢がある
そのうえで、もし「自分名義でも寄付をして、控除も受けたい」と考えるなら、方法は別にある。
グッズを買うこととは別に、自分で直接寄付をすればいい。両方やってはいけない理由はどこにもない。
災害時の寄付で控除を受けるには、いくつか押さえておくべき点がある。
- 寄付先によって扱いが変わる——日本赤十字社や共同募金会の「災害義援金」口座など、最終的に被災自治体の配分委員会へ渡るものは、地方公共団体への寄附として扱われる。一方、NPOなどが行う支援活動への寄付は、団体の種類によって扱いが異なる
- 寄付を証明できる書類が必要になる——国税庁は寄附金の受領証(領収書)を必要書類として案内している。街頭募金やコンビニの募金箱は、気持ちとしては立派だが、書類が残らないぶん控除には使いにくい
- ワンストップ特例には落とし穴がある——ふるさと納税と同じ感覚で考えると間違えることがある
控除額の計算式は、その年の特定寄附金の合計額(総所得金額等の40%が上限)から2,000円を引いた額が所得から控除される、というものだ。寄付先によっては、所得控除ではなく税額控除を選べる場合もある。
このあたりは災害義援金は寄付金控除できる?寄付先で変わる扱いとワンストップ特例の落とし穴で詳しく整理しているので、実際に寄付をする前に一度確認してほしい。
ただし、控除を目的に寄付するのは本末転倒だ
念のため書いておく。
寄付金控除は、支出した額が戻ってくる制度ではない。所得から差し引かれるだけなので、手元の現金は必ず減る。「控除があるからお得」という話ではない。
控除は、寄付をしたあとに使える仕組みであって、寄付をする理由ではない。順番を逆にしないほうがいい。
FPとして思うこと
今回の件で整理すると、こういうことになる。
- チャリティグッズを買う → 控除は受けられない。だが支援は確実に届く
- 自分で直接寄付する → 支援が届き、要件を満たせば控除も受けられる
- 両方やる → 何も矛盾しない
仕事柄、お金の話は「どちらが得か」で語られやすい。だが今回のような話に、その物差しはあまり合わない。
控除が受けられないと知ったところで、私は次もB’zのグッズを買うと思う。買いたいから買っているのであって、控除のために買っているわけではないからだ。それでも支援になっているのなら、そんなにいい話はない。
ただ、「自分の名前で、被災地に届けたい」と思ったときには、別の手段がある。そのときは要件を満たす形で寄付をすればいい。知っているかどうかの差でしかない。
参考にした情報
寄付や支援を、家計の中でどう位置づけるか
寄付は「余ったお金でするもの」と思われがちだが、続けるつもりなら家計の中に居場所を作っておいたほうがうまくいく。かながわFP相談所では、こうした支出も含めた家計全体の設計についてご相談を承っている。
※当方はファイナンシャル・プランナーであり、確定申告書の作成・提出の代行(税理士の業務)は行っていない。個別の控除額の判定や申告手続きについては、税務署または税理士へご確認いただきたい。
※本記事は2026年8月12日時点で公表されている国税庁の情報および各社報道にもとづいて作成している。チャリティグッズの収益の取扱いは販売主体によって異なる場合がある。寄付金控除の適用可否は寄付先や寄付の形態によって変わるため、実際の申告にあたっては寄付先が発行する書類および国税庁の最新情報を必ず確認いただきたい。

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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