災害義援金は寄付金控除できる?寄付先で変わる扱いとワンストップ特例の落とし穴をFPが解説

⏱ この記事でわかること(30秒)
- 災害義援金は寄付金控除の対象になる。ただし「どこに出したか」で扱いが変わる
- ワンストップ特例が使えるのは自治体の災害対策本部に直接出した場合だけ。日本赤十字社や共同募金会だと使えない
- 認定を受けていないNPO法人や職場の有志の募金は、そもそも控除の対象外
- 銀行振込の控えだけでは足りないことがある。「専用口座だと分かる資料」が要る
災害義援金は寄付金控除の対象になる
災害が起きるたびに義援金が集まる。2026年7月末の熊本の地震でも、企業や個人からの寄付が続いている。
このとき、意外と知られていないのが税金の扱いだ。個人が支払った災害義援金は、多くの場合「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象になる。ただし年末調整では処理できないため、控除を受けるには確定申告が必要になる。
そしてもう一つ、見落とされやすい点がある。同じ「義援金」でも、どこに出したかによって税務上の扱いが変わる。控除が受けられるかどうかだけでなく、手続きの手間まで変わってくる。
この記事では、国税庁の「義援金に関する税務上の取扱いFAQ」をもとに、寄付先ごとの違いを整理する。
寄付先で扱いが変わる|4パターンの比較
まず全体像を押さえたい。個人が義援金を出した場合、寄付先によって次のように分かれる。
| 寄付先 | 控除の種類 | ふるさと納税 に該当するか | ワンストップ 特例 |
|---|---|---|---|
| 被災地の自治体に設置された災害対策本部 | 寄附金控除 (所得控除) | 原則、該当する | 使える |
| 日本赤十字社・中央共同募金会等の専用口座 (最終的に自治体へ拠出されるもの) | 寄附金控除 (所得控除) | 原則、該当する | 使えない |
| 認定NPO法人等 | 所得控除と税額控除の 選択適用 | 該当しない | — |
| 認定を受けていないNPO法人、 職場の有志で組織した団体など | 対象にならない | — | — |
出典:国税庁「義援金に関する税務上の取扱いFAQ」(令和7年8月1日現在の法令等に基づく記載)をもとに作成
いちばんの落とし穴はワンストップ特例
上の表で注目してほしいのは、上2つの行だ。控除が受けられる点は同じなのに、ワンストップ特例の可否だけが逆になっている。
- 被災地の自治体(災害対策本部)に直接出した義援金 → 原則ふるさと納税に該当し、ワンストップ特例が使える
- 日本赤十字社や中央共同募金会の専用口座に出した義援金 → 原則ふるさと納税に該当するが、ワンストップ特例は使えない
ワンストップ特例が使えないということは、控除を受けるには確定申告をするしかないということだ。ふだん確定申告をしていない会社員にとっては、ここが実際のハードルになる。
「赤十字に寄付したから、ふるさと納税と同じように書類を出せば終わり」と考えていると、手続きが漏れて控除を受けられないまま終わる可能性がある。
なお、日本赤十字社や共同募金会に出した義援金であっても、その団体の事業資金として使われるものは扱いが変わる場合がある。「災害義援金」の専用口座かどうかで違ってくるため、迷う場合は寄付先に直接確認するのが確実だ。
控除額はどう計算するか
所得控除(寄附金控除)の場合
もっとも一般的なのがこちらだ。計算式はシンプルで、
その年に支出した特定寄附金の合計額 − 2,000円 = 寄附金控除額
となる。ここで引かれる2,000円は、ふるさと納税の「自己負担2,000円」と同じ性格のものだ。
上限がある点には注意したい。特定寄附金の合計額は、総所得金額等の40%相当額が上限になる。
税額控除(寄附金特別控除)を選べる場合
寄付先が認定NPO法人等や一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人であれば、所得控除に代えて税額控除を選ぶことができる。
(認定NPO法人等への寄附金の合計額 − 2,000円)× 40% = 税額控除額
こちらは所得税額の25%相当額が上限だ。
所得控除は「課税の対象になる所得を減らす」もので、効き方が税率に左右される。税額控除は「計算された税額から直接引く」ものだ。どちらが有利かは所得や寄付額によって変わるため、一律にどちらがよいとは言えない。
領収書がないと控除は受けられない
見落とされやすいのが書類だ。寄付をしたこと自体は事実でも、それを証明できなければ控除は受けられない。
国税庁が挙げている書類は次のとおりである。
- 被災地の自治体に設置される災害対策本部が発行する受領証
- 募金団体の預り証
- 郵便振替で支払った場合の半券(受領証)
- 銀行振込で支払った場合の振込票の控え
ここで注意したいのが、③と④には条件が付いているという点だ。振込先が義援金の受付専用口座である場合に限られるうえ、確定申告の際には、募金要綱・募金趣意書・新聞報道・募金団体のホームページの写しなど、その口座が義援金の受付専用口座であることが分かる資料をあわせて添付または提示する必要がある。
つまり「振り込んだ記録さえあればいい」わけではない。寄付をした時点で、募集ページのスクリーンショットを残しておくくらいの用意をしておくと、後で困らない。
FPとして、家計目線で付け加えておきたいこと
ここまで制度の話をしてきたが、最後に一つだけ。
控除の有無で寄付先を決める必要はない。義援金は困っている人に届けたくて出すものであって、税金の最適化のために出すものではない。「どこに出せば得か」を考え込んで出しそびれるくらいなら、出したいところに出したほうがいい。
そのうえで、同じ金額を出すなら、手続きの手間だけは事前に知っておいたほうがいいというのが実務的な話になる。とくに、ふだん確定申告をしない会社員が赤十字に寄付した場合、ワンストップ特例が使えないぶん、確定申告をしなければ控除は受けられない。そこを知らずに「手続きしたつもり」になっているケースは起こりやすい。
家計全体で見れば、義援金の控除額そのものは大きな金額にならないことが多い。それでも、制度を知っているかどうかで結果が変わるという点では、これまで扱ってきたふるさと納税やセルフメディケーション税制と同じ構造の話である。
災害への備えという意味では、寄付する側だけでなく、自分の家の地震への備えを確認しておくことも忘れないでおきたい。
まとめ
- 個人が支払った災害義援金は、多くの場合「特定寄附金」として寄附金控除の対象になる
- 自治体の災害対策本部に直接ならワンストップ特例が使えるが、日本赤十字社・共同募金会経由では使えない
- 認定を受けていないNPO法人や職場の有志の募金は、控除の対象外
- 控除額は「合計額 − 2,000円」。総所得金額等の40%が上限
- 振込の控えだけでは足りない場合がある。専用口座だと分かる資料を残しておく
制度は年度によって変わることがある。実際に申告する際は、国税庁の最新の案内を確認してほしい。
Q. 災害義援金は年末調整で処理できますか?
できません。寄附金控除は年末調整の対象外のため、控除を受けるには確定申告が必要です。ただし、被災地の自治体の災害対策本部に直接支払った義援金でワンストップ特例の条件を満たす場合は、確定申告をせずに住民税からの控除を受けられます。
Q. 日本赤十字社に寄付した場合もふるさと納税になりますか?
最終的に地方公共団体(義援金配分委員会等)に拠出されるものであれば、原則としてふるさと納税に該当します。ただしワンストップ特例の適用はできないため、控除を受けるには確定申告が必要です。
Q. 職場で集めた募金も控除できますか?
職場の有志で組織した団体などへの寄付は、寄附金控除の対象になりません。ただし、その募金が取りまとめられて最終的に地方公共団体に拠出されるものである場合は、特定寄附金として扱われます。募金の行き先によって変わるため、取りまとめている担当者に確認してください。
Q. 領収書をなくしてしまいました。控除は受けられませんか?
寄付先に再発行を依頼できる場合があります。銀行振込であれば振込票の控えが使えることもありますが、その口座が義援金の受付専用口座である場合に限られ、専用口座であることが分かる資料の添付または提示も必要です。まずは寄付先に相談してください。
※本記事は制度の一般的な解説です。かながわFP相談所は税理士業務を行いません。個別の税額計算や確定申告書の作成・提出は税理士の業務範囲となるため、具体的な申告手続きについては税務署または税理士にご相談ください。
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この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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