年金の「意向確認書」が届いたら?何もしないと公金受取口座に登録される仕組みをFPが解説

日本年金機構から簡易書留で届く「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」の要点図。何もしないと登録される仕組み、詐欺との見分け方、返送期限45日以内と専用フリーダイヤル、対象は2026年4月15日時点で65歳以上の年金受給者

2026年8月から、年金を受給している一部の人に「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」という書類が、日本年金機構から簡易書留で届く。

見慣れない名前の書類が、しかも簡易書留で届く。「これは本物なのか」「何かの手続きが要るのか」「口座を勝手に登録されるのか」と身構えた人もいるだろう。

結論から書く。この書類は本物の行政手続きであり、詐欺ではない。

そして今回の制度で最も注意すべき点は、ここだ。

対象者が意向確認書を受け取り、期限内に「登録しない」という意思表示をしなかった場合、年金の振込口座がそのまま公金受取口座として登録される。

登録してよいなら、何もしなくてよい。登録したくないなら、こちらから動く必要がある。通常の申請手続きとは向きが逆になっている点が、この制度の分かりにくさの正体だ。

この記事では、届いた書類にどう対応すればよいのかを、日本年金機構とデジタル庁が公表している情報にもとづいて整理する。

「意向確認書」とは何か

今回送付されるのは、正式には「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」という書類である。

背景にあるのは公金受取口座登録法の改正だ。これにより、日本年金機構が持っている年金振込口座の情報をデジタル庁へ提供し、公金受取口座として登録できる仕組みが設けられた。デジタル庁はこれを「行政機関等経由登録の特例制度」と呼んでいる。

公金受取口座とは、給付金などを受け取るための口座として、本人名義の預貯金口座をあらかじめ国に登録しておく制度である。登録しておくと、給付金を申請するたびに口座情報を書き写したり、通帳の写しを添付したりする手間を省ける場合がある。

今回の意向確認書は、その登録に同意するかどうかを確認するための書類だ。

誰に届くのか

日本年金機構によれば、対象は次の条件に当てはまる人である。

  • 2026年(令和8年)4月15日時点で65歳以上(1961年〈昭和36年〉4月16日以前生まれ)
  • 年金を受給している
  • 公金受取口座をまだ登録していない

ただし、次に当てはまる場合は送付されない。

  • すでに公金受取口座を登録している
  • 2026年4月に年金が支払われなかった
  • 国外に居住している
  • 共済組合等からのみ年金を受給している
  • 2025年(令和7年)6月以降の年金請求時に、すでに登録の意思表示をしている

送付は2026年8月頃から2027年(令和9年)2月頃にかけて、生年月日別に順次行われる。つまり、同じ条件の知人にまだ届いていなくても異常ではない。半年以上かけて順番に送られる。

何もしなければ、公金受取口座として登録される

ここが今回の核心である。

公金受取口座として登録してよいのであれば、手続きは要らない。意向確認書を受け取った後、不同意の申し出をしなければ、意向確認期間の経過後に、現在の年金振込口座が公金受取口座として登録される。

一般的な行政手続きは「登録したい人が申請する」方式だが、今回はその逆で、登録したくない人が期限内に意思表示をする方式になっている。デジタル庁は、意向確認書の到着から最低45日間の意向確認期間を設けるとしている。

「よく分からないから、とりあえず放っておこう」という判断が、そのまま「登録に同意した」という結果になる。ここだけは押さえておきたい。

公金受取口座に登録したくない場合の手続き

年金の振込口座を公金受取口座として登録したくない場合は、放置してはいけない。同封されている「公金受取口座登録不同意申出書」を返送する必要がある。

手順は、同封リーフレットに次のように示されている。

  1. 切り取り線にそって、不同意申出書を意向確認書から切り離す
  2. 不同意申出書に目隠しシールを貼り、裏面の差出人欄を記入する
  3. ポストに投函する

返送の期限は、意向確認書を受け取ってから45日以内とされている。期限の目安は不同意申出書の下部に印字されている。

返送期限を過ぎてしまったら

ここについては、公的な説明が2か所で食い違っているため、両方を示しておく。

デジタル庁のよくある質問では、期限を過ぎて不同意申出書を送付した場合、受理されず、同意として受け付けられるという趣旨の説明がされている。

一方、意向確認書に同封されている日本年金機構のリーフレットでは、「返送期限は目安です。経過した後にご返送いただいても間に合う場合があります」として、意向確認書照会専用フリーダイヤルへの問い合わせを案内している。

読者の手元にあるのは後者のリーフレットである。したがって、実務的な結論はこうなる。

  • 期限内に返送するのが確実であることは間違いない
  • 過ぎてしまった場合は、諦める前に専用フリーダイヤルに確認する価値がある
  • そして、仮に登録されてしまっても、それで終わりではない

登録が完了した後であっても、マイナポータルまたは金融機関の窓口で、公金受取口座の登録を抹消する手続きができる。取り返しのつかない話ではない。

預金残高や取引履歴まで国に見られるのか

最も誤解されやすいのがこの点だろう。

公金受取口座として登録されるのは、給付金を振り込むために必要な情報である。具体的には、氏名・住所・生年月日といった本人情報と、金融機関名・支店・口座種別・口座番号・口座名義といった振込先の情報だ。

デジタル庁は、預貯金口座の暗証番号やオンラインバンキングのパスワード等を聞くことは一切ないこと、口座残高や取引履歴を把握することはないことを明記している。登録によって国が預金を勝手に引き出すこともない。

「マイナンバーに口座を紐づけると資産を丸ごと把握される」という言われ方をすることがあるが、少なくともこの制度で登録されるのは振込に必要な情報にとどまる。

年金の振込先が変わるわけではない

これも勘違いされやすい。

今回、公金受取口座として登録されるのは現在の年金振込口座そのものである。「公金受取口座に登録されると、年金の振込先が別の銀行に変わってしまう」という話ではない。今使っている口座を、給付金の受取口座としても使えるようにする、というだけだ。

別の口座を登録したい場合

実務上、意外と重要な分岐がここにある。

今回の案内では、意向確認書に記載された年金振込口座以外の口座を、公金受取口座として登録することはできない。

「年金は生活費用の口座で受け取っているが、給付金は別の口座で受け取りたい」という希望がある場合は、次の二段構えになる。

  1. 不同意申出書を返送する
  2. そのうえで、マイナポータルまたは金融機関で、希望する口座を自分で登録する

なお、いったん不同意を返送した後でも、マイナポータルや金融機関で自分で登録手続きを行うことは可能である。不同意は「今回の一括登録に乗らない」という意思表示にすぎず、公金受取口座制度そのものから排除されるわけではない。

本物と詐欺の見分け方

行政から本物の書類が届く制度が始まるとき、必ず出てくるのがそれに便乗した詐欺である。今回も警戒しておきたい。

日本年金機構は、「日本年金機構、厚生労働省およびデジタル庁から、電話、SMS、メールで口座番号等の提供を求めることはありません。また、手数料などの金銭を求めることもありません」と明記している。

見分ける基準を整理すると、次のようになる。

本物の手続き詐欺を疑うべきケース
日本年金機構から簡易書留の郵便で届く電話がかかってきて口座情報を聞かれる
登録に同意するなら手続きは不要SMSやメールでリンクを開くよう促される
不同意の場合は同封の書類を郵送で返す暗証番号やキャッシュカードの情報を求められる
手数料はかからない手数料や現金を要求される
口座番号を新たに書かせない「口座を確認する」と言って番号を言わせようとする

最後の行は特に覚えておきたい。日本年金機構は年金の振込口座をすでに把握している。本物の手続きで、口座番号を改めて聞かれることはない。

電話・SMS・メールで口座情報や暗証番号を求められたら、それは今回の制度とは別の話だと考えてよい。応じてはいけない。

登録すると何が変わるのか

公金受取口座を登録しておくと、対象となる給付金などを受け取る際に、口座情報の記入や通帳の写しの提出を省略できる場合がある。デジタル庁によれば、公金受取口座は160種類以上の給付金等の受け取りに活用されており、災害時の被災者支援のように急ぐ場面でも、事前登録があれば給付が早くなるとされている。

高齢になるほど、給付金の申請のたびに通帳を探して口座番号を書き写す作業は負担になる。その手間を減らすことが、この制度の目的である。

ただし、登録したからといって、あらゆる給付金が自動的に振り込まれるわけではない。給付金ごとに申請や支給要件があることは変わらない。あくまで「振込先を毎回書かなくてよくなる」制度だと理解しておきたい。

登録完了までは3〜4か月

何もしなければ翌日に登録される、というものではない。

意向確認書を受け取ってから登録が完了するまでは、おおむね3〜4か月かかる。登録が完了すると、デジタル庁からマイナポータルのお知らせ、またはハガキで結果が通知される。

逆に、登録を急ぎたい事情があるなら、意向確認書の到着を待たずにマイナポータルや金融機関で自分で登録することもできる。

高齢の親に届いたときに確認したいこと

今回の対象は65歳以上の年金受給者である。本人だけでなく、子世代が親の書類を一緒に確認する場面が出てくるはずだ。

次のようなケースでは、本人だけで処理するのが難しい。

  • 郵便物を確認する習慣がなくなっている
  • 日中に不在がちで、簡易書留を受け取れない
  • 届いた書類の意味が分からず、そのまま置いてある
  • 口座を複数持っていて、どれが年金の振込口座か分からない
  • 認知機能の低下により、本人だけでは判断が難しい

本人による回答が難しい場合について、デジタル庁は「ご本人での回答が困難である場合、ご本人の意思を確認のうえ、後見人やご家族の方にて代筆・代理回答しても問題ありません」としている。家族が代わりに書くこと自体は認められている。

最もまずいのは「よく分からない書類が来ているが、放っておく」という状態だ。登録してよいなら放置で構わないが、登録したくないなら期限がある。この違いだけは、家族で共有しておきたい。

なお、高齢の親のお金については、こうした行政手続き以上に重い問題として、認知症による資産凍結がある。判断能力が低下した後では選べる手段が大きく狭まるため、こちらは元気なうちに手を打っておく必要がある。詳しくは認知症で口座が凍結される「資産凍結」とは?対策は”なる前”しかない理由で整理している。

また、高齢の親を狙う特殊詐欺の手口と、家族ができる備えについては愛媛県12億円特殊詐欺から学ぶ、高齢の親の資産を守る方法もあわせて読んでほしい。

FPとしての結論

今回の意向確認書は、怪しい書類ではない。2026年8月から2027年2月頃にかけて、日本年金機構から対象者へ順次送られる正式な行政手続きである。

判断すべきことは、突き詰めれば2つしかない。

  • 年金の振込口座を公金受取口座として登録してよい → 手続きは不要。放置でよい
  • 登録したくない、または別の口座にしたい → 45日以内を目安に不同意申出書を返送する

そして、電話・SMS・メールで口座情報や暗証番号を求めてくるものは、この制度とは無関係である。

制度そのものを恐れる必要はない。ただし、行政から本物の書類が届く時期だからこそ、それに便乗した詐欺が出やすい。その前提だけは持っておきたい。

困ったときの問い合わせ先

書類の内容が分からない、本物かどうか確かめたいという場合は、自己判断せず公式の窓口に確認するのが確実である。

  • 意向確認書照会専用フリーダイヤル:0120-74-0011
    受付時間:月曜日 8:30〜19:00/火曜日〜金曜日 8:30〜17:15/第2土曜日 9:30〜16:00
    (第2土曜日以外の土日祝、12月29日〜1月3日は利用不可。フリーダイヤルが使えない場合は 050-3524-7372)
    ※問い合わせの際は、意向確認書に記載された照会番号が分かるものを手元に用意する
  • マイナンバー総合フリーダイヤル:0120-95-0178(公金受取口座登録制度そのものに関する相談)

参考にした公式情報

「親に届いたけれど、これはどういう書類なのか」

年金や公金受取口座そのものの手続きは、上記の公式窓口が確実だ。かながわFP相談所では、そうした手続きの前後にある「高齢の親のお金をどう管理していくか」「認知症になる前に何をしておくか」といったご家族全体の設計についてご相談を承っている。

※当方はファイナンシャル・プランナーであり、年金の裁定請求や各種申請書類の作成・提出代行(社会保険労務士の業務)は行っていない。手続きそのものは日本年金機構またはお近くの年金事務所、社会保険労務士へご相談いただきたい。

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※本記事は2026年8月9日時点で公表されている日本年金機構およびデジタル庁の情報にもとづいて作成している。制度や手続きの内容は今後変更される可能性があるため、実際の手続きにあたっては、届いた意向確認書および各行政機関の最新情報を必ず確認いただきたい。返送期限の取り扱いについては、本文中に記載のとおり公表資料間で説明に差があるため、判断に迷う場合は意向確認書照会専用フリーダイヤルへ確認することを勧める。

かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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