がんになったらNISAはどうする?売却・積立継続・治療費への備えをFPが解説

「治療費のためにNISAを売った方がいいでしょうか」
がんと診断された後、実際によく受ける相談だ。
治療費への不安。収入減少への不安。将来への不安。
そんな状況の中で、真っ先に思い浮かぶのがNISA口座の資産かもしれない。
しかし、がんになったからといって、すぐにNISAを売却するのが正解とは限らない。
一方で、「長期投資だから絶対に売ってはいけない」という考え方も危険だ。
大切なのは、家計全体の状況を整理した上で判断すること。
この記事では、がんとNISAの関係についてFPの視点から解説する。
がんになるとNISAが気になり始める理由
がんになると、多くの人が資産運用どころではなくなる。
治療の予定が決まり、仕事を休み、収入が減る可能性が出てくる。
そんな時に目に入るのがNISA口座の残高だ。
- 治療費に使えるのではないか
- 積立を止めるべきではないか
- 暴落する前に売るべきではないか
- 教育費に回した方がいいのではないか
不安な時ほど、資産を現金化したくなる気持ちは自然なことだ。
しかし、まず確認してほしいことがある。
NISA資産は生活防衛資金の代わりではない
NISAは税制優遇制度であり、中で運用されているのは投資信託や株式だ。
そのため、病気や失業などの緊急事態に備えるお金とは本来役割が異なる。
理想的には、生活費6か月分程度の現預金を確保した上でNISAを活用したい。
ただし、教育費や将来の医療費など、もともと使う予定の資金として運用していた場合は別だ。
大切なのは「NISAだから売ってはいけない」ではなく、「今使うべき資金なのか」を整理することである。
まず確認したいお金の優先順位
FPとしておすすめしている確認順序は次の通りだ。
- 高額療養費制度
- 傷病手当金
- がん保険の給付金
- 現預金
- NISA
意外かもしれないが、NISAは最後だ。
まずは公的制度を確認してほしい。会社員であれば傷病手当金が利用できる可能性がある。高額療養費制度によって医療費の自己負担も一定額に抑えられる。また、がん保険に加入している場合は診断給付金を受け取れるケースもある。
こうした制度を確認する前にNISAを売却すると、本来残せた資産まで失う可能性がある。
がんとお金の全体像も合わせて確認してほしい。
NISAを取り崩した方がよいケース
もちろん、NISAを売却すること自体が悪いわけではない。次のようなケースでは合理的な判断になることもある。
- 生活防衛資金が不足している
- 治療費以外の生活費が不足する
- 教育費の支払い時期が迫っている
- 住宅ローン返済が難しくなる
- 借入を増やしたくない
例えば、毎月10万円の赤字が続く状況であれば、無理に資産を守るよりも生活を守る方が優先だ。
投資は生活を豊かにするための手段であって、生活そのものではない。
NISAを取り崩さない方がよいケース
反対に、次のようなケースでは急いで売却しない方がよい場合もある。
- 十分な現預金がある
- 傷病手当金が利用できる
- がん保険の給付金がある
- 配偶者収入で家計を維持できる
- 団信によって住宅ローン負担が軽減される可能性がある
特に治療期間が比較的短く、家計への影響が限定的な場合は、長期運用を継続した方が有利になるケースも多い。
がんと住宅ローンの記事も参考にしてほしい。
暴落時に売却するリスク
NISAで注意したいのが、相場下落時の売却だ。投資信託や株式は日々価格が変動する。病気による不安から慌てて売却した結果、大きな損失を確定させてしまうケースもある。
実際に市場は過去にも大きな下落を経験している。
- 2020年 コロナショック
- 2022年 世界的な利上げ局面
- 2025年 関税政策による市場混乱
治療費として本当に必要な金額はいくらなのか。現預金で何か月持つのか。制度でどこまでカバーできるのか。まず数字を整理してから判断したい。
教育費がある家庭はどう考えるか
子どもの進学が近い家庭では判断がさらに難しくなる。NISAは教育費目的で積み立てていたケースも多いからだ。その場合は、
- 奨学金制度
- 給付型支援制度
- 教育ローン
- NISA資産
を総合的に検討する必要がある。
がんと教育費の記事でも詳しく解説している。
FPとして、そして手術を経験した一人として
私自身、2025年に手術を経験した。
家族もがん治療を受けている。
だからこそ、お金の不安がどれほど大きいかを実感している。
治療が始まると、今後どれくらいお金がかかるのか分からなくなる。
仕事は続けられるのか。
収入は減るのか。
教育費や住宅ローンは大丈夫なのか。
そんな不安の中で、NISA口座の残高が気になり始めるのは自然なことだ。
しかしNISAは「絶対に売ってはいけない資産」ではない。
教育費や治療費など、本来の目的のために使うのであれば、売却は決して悪いことではない。
一方で、不安だけを理由に慌てて売却してしまうと、後から振り返った時に不要な判断だったというケースもある。
まずは高額療養費制度、傷病手当金、がん保険の給付金、手元資金でどこまで対応できるかを確認してほしい。
その上で不足する部分があるなら、NISAを活用すればいい。
NISAは人生のための資産だ。
投資は人生を豊かにするための手段であって、人生が投資のためにあるわけではない。
NISAを売るか残すかではなく、「何のために使うのか」を整理することが大切だ。
よくある質問
がんになったらNISAは売却した方がいいですか?
一概には言えない。まず高額療養費制度・傷病手当金・がん保険などを確認し、それでも資金不足が見込まれる場合に検討したい。
がんになったらNISAの積立は止めるべきですか?
家計が赤字になる場合は一時停止も選択肢になる。ただし無理なく継続できるなら、積立を維持した方が長期的には有利になるケースも多い。
特定口座とNISAならどちらから売るべきですか?
税金や含み益の状況によって判断が変わる。ケースによって最適解が異なるため、個別に確認することをおすすめする。
がん治療費はNISAだけで準備すれば十分ですか?
十分とは言えない。NISAは資産形成の手段であり、相場変動リスクがある。まずは生活防衛資金や公的制度、高額療養費制度・傷病手当金・保険給付などを確認した上で、必要に応じてNISA資産を活用するのが基本である。

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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