奈良県で増える高齢世代のNISA|親の口座が「凍結」する前に子世代が知っておきたいこと

奈良の和室で資産資料を前に悩む高齢の父と、肩に手を添えて寄り添う娘。親世代のNISA口座と将来の資産管理を考えるイメージ。

奈良県のNISAデータから見えてくるもの

奈良県のNISA口座開設状況を見ると、60代・70代といった高齢層の割合が、全国的に見ても高い水準にあります。

この数字だけを見ると「奈良は投資に積極的な県なのか」と思われるかもしれません。しかし、奈良でFPとして相談を受けている立場から見ると、これは投資ブームというより、奈良県の貯蓄文化が、そのままNISAに流れてきている結果だと感じています。

高齢世代のNISAが多い背景

奈良県は、収入が突出して高い地域ではありませんが、堅実に貯蓄をしてきた世帯が多い地域です。

そのため、
・預金だけで置いておくのはもったいない
・非課税という言葉に安心感がある
といった理由から、資産の置き場所としてNISAを使っている高齢世代が増えている印象があります。

子世代が把握できていない「親のNISA」

現在30代・40代の子育て世代にとって、親世代はちょうど60代・70代。奈良では、NISAを利用している可能性が高い世代と重なります。

ところが実際の相談では、
・親がNISAをしているか分からない
・何に投資しているか知らない
・口座があることだけは聞いたことがある
といったケースが少なくありません。

NISAは相続時に「そのまま引き継げない」

NISAは、相続が発生すると非課税制度そのものは引き継がれません。相続時点の評価額で引き継がれ、その後の運用や売却は相続人の判断になります。

このとき問題になるのが、親がどんな意図で、どんな運用をしていたのかが分からないという点です。

相続より前に起きる「認知症による口座凍結」

実務上、相続以上に注意が必要だと感じるのが、認知症による口座凍結です。

証券口座は、本人の判断能力が失われたと判断されると、原則として取引ができなくなります。すると、相場が大きく下落しても、売却やリスク調整ができなくなります。

値動きから逃げられない状態が、突然訪れる可能性があります。

実務で実際に起きたケース

以前、相談を受けた中で強く印象に残っているケースがあります。

高齢の姉妹世帯で、身寄りはお互いだけという状況でした。そのうち一人が認知症を発症し、本人名義の投資信託口座が、事実上動かせなくなってしまったのです。

売却も、リスクを下げることもできない。相続の話以前に、判断能力を失った瞬間から資産が止まるという現実を目の当たりにしました。

銀行・証券会社の「代理人予約」、実は穴がある

「代理人予約」や「家族登録」といった制度がある、という話を聞いて安心した方もいるかもしれません。ただ、内容を一次資料まで確認すると、思っていたより頼りにならない部分が見えてきます。

三菱UFJ銀行の「予約型代理人」、三井住友銀行の「代理人指名手続」、みずほ銀行の「代理人予約サービス」は、いずれも本人の判断能力があるうちに事前登録し、診断書の提出などをきっかけに発動する仕組みです。ただし出金できる金額には上限があり、日額10万〜50万円・月額でも概ね50万円程度が相場です。生活費や介護費用をまかなう分には使えますが、大口の資産を動かす受け皿としては設計されていません。

全国銀行協会が2021年2月に示した指針も、「本人の利益が明らかな医療費等」に限った事後的な救済にとどまり、原則は成年後見制度の利用が前提です。「代理人予約さえしておけば大丈夫」という理解は、実務上は正確ではありません。

証券口座の「代理人」は、これまで売却しかできなかった

証券口座にも似たような制度があります。大和証券の「予約型代理人」や三菱UFJモルガン・スタンレー証券の同種の制度は、いずれも売却・出金のみで、新規の買付は明示的に禁止されています。つまり、認知症になった時点で「これ以上増やす」という判断はできなくなり、あとは取り崩すだけの口座になります。

この状況が変わり始めたのは2026年に入ってからです。日本証券業協会(JSDA)が2026年1月に公表した「家族サポート証券口座制度」は、買付を含めた運用の継続を認める初めての枠組みです。ただし、本人の判断能力があるうちに公証役場で公正証書を作る契約が必須で、家族代理人になれるのは配偶者や直系卑属など1名のみ。導入している証券会社は、2026年9月時点でまだ今村・香川・丸八・スターツ・むさし・安藤・日産の7社にとどまり、ネット証券大手は導入していません(今後の追加導入はありえます)。

制度を使っていても、口座が凍結される穴がある

ここが一番見落とされやすい点です。家族サポート証券口座の要綱そのものに、「代理取引を始めたあとでも、出金口座が凍結される場合がある」という例外事項が明記されています。しかも、その解決策は「各証券会社の判断による」としか書かれていません。

理由は単純です。銀行は認知症に関する情報を証券会社と共有する仕組みを持っていません。証券側の代理人手続きが整っていても、銀行の窓口対応やATMの操作ミス、あるいは家族が窓口で相談したこと自体がきっかけで、銀行口座の方だけが独立して凍結される可能性があります。せっかく証券側で手続きを終えても、出金先の銀行口座が動かなければ意味がありません。

この点で構造的に立場が違うのが、家族信託の信託口口座です。信託口口座は本人名義ではなく受託者名義の口座になるため、そもそも「本人の判断能力」を理由にした凍結の対象から外れます。保険にも、契約者本人に代わって家族が解約・請求できる「指定代理請求特約」や「契約者代理制度」があり、こちらは金融機関同士の連携に頼らない分、動かしやすい設計です。この違いは親が認知症になったら、保険のお金はどうなる?「家族登録があるから大丈夫」が危ない理由で詳しく書いています。

親世代のNISAで実際に多い運用の実態

親世代のNISAでは、
・勧められて始めた
・非課税だから使っている
・預金よりは良さそうと思った
といった理由で、時間軸や目的が整理されないまま運用されているケースもあります。

商品そのものが悪いわけではありませんが、年齢や資産全体のバランスを考えると、金額や集中度の面で負担が大きくなりすぎる可能性があるため、注意点としてお伝えしています。

奈良でNISAを考えるときの実務的な視点

奈良では特に、NISAを「増やす制度」としてだけ捉えるのではなく、
・将来、誰が管理するのか
・判断できなくなったとき、どうなるのか
・子世代のライフプランに合っているか
まで含めて、家族単位で整理しておくことが重要だと感じています。

なお、子世代ご自身のNISAについて「一括で入れるべきか、積立にすべきか」で迷う方も多いと思います。判断軸(つみたて投資枠・成長投資枠の使い分け、年初一括の考え方)を別記事で整理していますので、よければあわせてご覧ください。
新NISAで一括投資か積立か迷ったら|NISAつみたて投資枠・成長投資枠の使い分けと2026年の年初一括戦略

まとめ:親のNISAは「家族のお金」

奈良県で高齢層のNISAが多い背景には、長年培われてきた貯蓄文化があります。

だからこそNISAは、個人だけの資産形成ではなく、将来、家族に引き継がれる可能性のあるお金として、一度立ち止まって考えておきたい制度でもあります。

相続の前に、認知症という現実がある。この視点を持つだけでも、将来の選択肢は大きく変わります。

まずは「親のNISA」を一緒に確認するところから

難しい制度や専門的な対策を考える前に、まず大切なのは、親がNISAを使っているかどうか、何に投資しているのかを把握することです。

・どこの金融機関か
・誰の名義か
・将来、判断できなくなったときに誰が管理するのか

この3点を確認するだけでも、将来のリスクは大きく変わります。

そのうえで、銀行の代理人予約や証券の家族サポート口座を使うかどうかは、「何にどこまで対応できる制度か」を金融機関ごとに確認してから判断することをおすすめします。制度任せにできる部分と、家族信託や保険の代理制度で補う部分を分けて考えると、抜け漏れが減ります。

「まだ元気だから大丈夫」な今こそ、
家族で一度、静かに話しておく価値があるテーマだと思います。

この記事の執筆者

金川 崇(かながわFP相談所)

奈良県橿原市を拠点に活動する独立系ファイナンシャルプランナー(FP/IFA)。
生命保険・損害保険・NISA・iDeCoなど、お金に関する幅広い相談を行っている。

これまでの相談件数は1,000件以上。
特に、相続・認知症・高齢期の資産管理といったテーマについて、実務で実際に起きているケースを踏まえた相談を多く受けている。

「商品を売るため」ではなく、家計や資産の状況を整理することを重視した相談スタイル。


家計・お金の整理をご希望の方へ

かながわFP相談所では、全国オンライン対応でのご相談を承っています。
「今すぐ何かを決めたい」段階でなくても構いません。

家族のお金や将来の管理について、
一度整理してみたいと感じたタイミングでご利用ください。

▶ メールで相談する
▶ LINEで相談する

この記事を書いたFPに直接相談できます

▶ FP相談について詳しく ▶ LINEで相談する

かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

≫ 52歳、FP金川が病室で見た真実と、詳しい経歴はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)