がんでも介護保険は使える?末期がんだけ?FPがわかりやすく解説
「がんになったら介護保険って使えるんですか?」
相談の場でよく出る質問だ。がんが長期化する病気になったいま、この疑問を持つ人は増えている。
結論から言うと――
- 65歳以上なら、要介護認定を受ければ利用できる
- 40〜64歳は、末期がんなど「特定疾病」に限られる
- 40歳未満は、介護保険の対象外
この違いを知らずにいると、使えるはずの支援を見逃すことになる。制度は複雑に見えるが、年齢と病状の組み合わせで整理すると意外とシンプルだ。
この記事では、がん患者と介護保険の関係を、FPの立場から順番に説明していく。
▶ がんになったら使えるお金・制度の一覧|FPが整理しました
① がん患者は介護保険を利用できる?
まず前提として、介護保険は年齢によって加入区分が変わる。
- 65歳以上:第1号被保険者
- 40〜64歳:第2号被保険者
- 40歳未満:介護保険の被保険者にならない
利用できる条件は、この区分によって異なる。
| 年齢 | 介護保険は使える? | 条件 |
|---|---|---|
| 65歳以上 | ○ 利用可能 | 要介護(要支援)認定を受ければ、原因を問わず利用できる |
| 40〜64歳 | △ 条件あり | 特定疾病(16種類)に該当し、要介護認定を受けた場合のみ |
| 40歳未満 | × 利用不可 | 介護保険の被保険者にならないため、制度の対象外 |
65歳以上の場合は、がんであってもなくても、要介護認定さえ受ければ介護保険を利用できる。がんの進行によって日常生活が困難になっていれば、申請する価値は十分にある。
問題は、40〜64歳のケースだ。
② 「末期がんだけ」というのは本当?
40〜64歳が介護保険を利用するには、特定疾病への該当が必要になる。
特定疾病とは、介護保険法で定められた16種類の疾病のことで、がんはそのうちの一つに含まれている。ただし、条件がある。
40〜64歳のがん患者が介護保険を利用できるのは、「末期がん」に限られる。
末期がんとは、厚生労働省の定義では「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの」とされている。余命の期限が制度上の要件になっているわけではなく、あくまで医師の判断が基準だ。
つまり、がんと診断されただけでは使えない。治療中の状態では該当しないケースが大半だ。
整理するとこうなる。
| 65歳以上 | 40〜64歳 | |
|---|---|---|
| 早期・治療中のがん | ○(要介護認定があれば) | × 基本的に対象外 |
| 末期がん | ○(要介護認定があれば) | ○(特定疾病として申請可能) |
40代・50代でがんを患っている人が「介護保険って使えないの?」と思っていても、病状の段階によっては本当に使えないことがある。一方、65歳を超えていれば、末期でなくても要介護状態になっていれば利用できる。
この違いを知っているかどうかで、受けられる支援が変わる。
なお、がんの進行が速い場合には、市区町村が認定手続きをできるだけ迅速に進めるケースがある。申請から認定まで時間がかかることも想定して、早めに主治医や地域包括支援センターに相談しておくことを勧める。
③ 医療保険と介護保険の役割の違い
「医療保険があるから大丈夫」と思っている人が多いが、医療保険と介護保険は役割が違う。
| 主な対象 | |
|---|---|
| 医療保険(公的) | 入院・手術・抗がん剤・放射線治療・外来診療 |
| 介護保険(公的) | 訪問介護・福祉用具・住宅改修・デイサービス・ショートステイ・訪問看護(※) |
※訪問看護は、医療保険と介護保険のどちらが適用されるかが、年齢や病状・主治医の指示内容などによって異なる。自己判断せず、ケアマネジャーや主治医に確認することを勧める。
医療保険は「病気を治す」ための費用をカバーする制度で、介護保険は「日常生活を支える」ための制度だ。
がんの治療が長期化すると、この二つが同時に必要になることがある。たとえば、抗がん剤治療を続けながら、自宅での生活を支えるために訪問介護を使う、というケースだ。
どちらかを選ぶのではなく、両方を使いながら在宅生活を続けるという発想が、特に終末期に近づくにつれて重要になってくる。
④ 実際は医療費と介護費が同時に発生する
ここが、制度の話だけで終わってはいけない部分だ。
がんが進行すると、医療費と介護費が並行してかかってくる。実際に相談の場で聞く支出の内訳は、こんな感じになる。
- 抗がん剤・緩和ケアの治療費(医療費)
- 通院のための交通費・付き添いの費用
- おむつ・ベッド・車いす(介護用品)
- 訪問介護・配食サービスの費用
- 家族が休職・時短になることによる収入減
「高額療養費制度があるから医療費は上限がある」という話はよく知られている。確かにその通りだ。ただ、高額療養費でカバーされるのは保険診療の医療費だけで、交通費・介護費・食費・家族の休職による収入減は対象外になる。
制度を知っているだけでは追いつかない、というのが現実だ。
⑤ 在宅療養では介護保険が重要になる
近年、がんの終末期を自宅で過ごすことを希望する人が増えている。在宅緩和ケアという選択肢が広がったこともあって、病院に戻らずに最期まで自宅で過ごすケースも珍しくない。
その場合、介護保険のサービスが在宅生活を支える柱になる。
- 訪問介護:ヘルパーが自宅に来て入浴・食事・排泄を介助する
- 訪問入浴:自宅で入浴できるよう専門スタッフが対応する
- 福祉用具貸与:介護ベッド・車いす・歩行器などをレンタルできる
- 訪問看護:医師の指示のもと、看護師が定期的に自宅を訪問する(適用保険は要確認)
- 住宅改修:手すりの設置・段差の解消などに補助金が使える
これらを組み合わせることで、家族だけでは難しい在宅療養を継続できる場合がある。
介護保険の利用には、まず要介護認定の申請が必要だ。申請は本人や家族が市区町村の窓口に行うか、地域包括支援センターに相談すると動いてもらえる。がんの進行が速い場合は、早めに動くほど選択肢が広がる。
⑥ よくある質問(FAQ)
- Q. がんになったらすぐ介護保険は使えますか?
- 65歳以上は要介護認定を受ければ利用できますが、認定には一定の時間がかかります。40〜64歳は末期がんなど特定疾病に該当すると医師が判断した場合のみ申請できます。早めの相談が大切です。
- Q. 介護保険と高額療養費制度は同時に使えますか?
- 使えます。それぞれ対象となる費用が異なります。高額療養費制度は医療費の自己負担上限を設ける制度、介護保険は介護サービスの費用をカバーする制度です。両方を組み合わせることで、家計への負担を分散できます。
- Q. 要介護認定はどこで申請しますか?
- お住まいの市区町村の窓口(介護保険担当課)か、地域包括支援センターに相談するのが最初のステップです。申請後、訪問調査と主治医意見書をもとに認定が行われます。
まとめ:がんと介護保険、正しく理解して備える
がん=介護保険が使えると思っていた人も、使えないと諦めていた人も、実際には年齢・病状・要介護認定の状況によって答えが変わる。
整理するとこうだ。
- 65歳以上:要介護認定があれば、がんの種類や進行度に関係なく利用できる
- 40〜64歳:末期がんと医師に判断された場合に限り、特定疾病として申請できる
- 40歳未満:介護保険の対象外
医療保険は「治す」ための制度、介護保険は「生活を支える」ための制度だ。この二つは役割が違い、がんの進行に伴って両方が必要になるケースがある。
制度を知っているだけでは足りない。医療費・介護費・収入減少まで含めて家計全体を見渡すこと、それがFPの役割だと思っている。
この記事を書いたFPに直接相談できます
かながわFP相談所(奈良県橿原市)は保険・NISA・住宅ローン・ライフプランを中立な立場でサポートする独立系FPです。橿原市・奈良市・大和高田市・桜井市など奈良県全域+全国オンライン対応。
※本記事は介護保険制度の一般的な内容を解説したものです。介護保険の利用可否は個々の状況・認定結果により異なります。申請・手続きについては、お住まいの市区町村窓口または地域包括支援センターにご相談ください。
監修:かながわFP相談所 FP金川

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
≫ 52歳、FP金川が病室で見た真実と、詳しい経歴はこちら