がんと診断されたら遺族年金を確認してほしい理由|残された家族のお金をFPが解説

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療・保険アドバイスではありません。治療方針・費用については担当医に、保険の選び方については専門のFPにご相談ください。薬剤費・医療費は参考値であり、実際の費用は個人の状況により異なります。
がんと診断されたら遺族年金を確認してほしい理由|残された家族のお金をFPが解説

がんになって、最初に調べるのは「治療費」だ

高額療養費、傷病手当金、障害年金——がんと診断されると、多くの人がこの順番でお金を調べる。

でも、ある制度を確認している人はほとんどいない。

遺族年金だ。

「遺族年金は亡くなってから考えるもの」と思っていないか。実は逆で、がんと診断された今だからこそ確認する価値がある。残された家族がどれだけ受け取れるかを知ることで、生命保険が足りているかどうかの判断ができるからだ。

この記事では、子どもがいる40代家庭のモデルケースを使って、遺族年金の仕組みと不足額の現実を整理する。

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遺族年金とは何か

遺族年金は、公的年金に加入していた人が亡くなったとき、残された家族が受け取れる年金制度だ。大きく2種類ある。

遺族基礎年金

国民年金から支給される。子どもがいる配偶者、または子ども自身が受給できる。

受給できる期間は、子が18歳の年度末(高校卒業年齢)まで。子どもが独立すると支給が終わる点が重要だ。

遺族厚生年金

厚生年金(会社員・公務員)に加入していた人が亡くなった場合に支給される。配偶者・子・父母などが対象になる。国民年金のみ加入者(フリーランス・自営業)には支給されない。

金額は亡くなった人の報酬と加入期間によって変わる。加入期間が短い場合も、一定の計算方法でみなし計算が行われる。

モデルケースで確認する

以下のモデルで試算する。

項目設定
42歳・年収550万円・厚生年金加入20年
40歳・専業主婦
12歳・9歳

このケースで夫が亡くなった場合、妻が受け取れる遺族年金の概算は以下のとおりだ。

種類概算年額備考
遺族基礎年金約130万円子2人加算含む。末子18歳年度末まで
遺族厚生年金約50〜60万円報酬・加入期間による。終身受給
合計約180万円前後月額約15万円

※金額は年度によって改定される。実際の受給見込みは年金事務所またはねんきんネットで確認してほしい。

月15万円で、生活できるか

月約15万円。これが遺族年金の現実だ。

3人家族(妻・子2人)の生活費として月30万円を想定すると、毎月約15万円が不足する

項目月額
遺族年金(概算)約15万円
生活費(目安)約30万円
毎月の不足額約15万円

さらに状況は時間とともに変わる。

  • 末子が18歳を迎えると、遺族基礎年金が終了。受取額が月約4〜5万円まで急減する

つまり、子どもが独立した後は「教育費が減る」一方で、「遺族年金も大きく減る」という変化が起きる。

  • 住宅ローンが残っていれば、毎月の返済がそのまま負担になる
  • 子どもが大学進学を希望すれば、教育費が重なる

遺族年金は「あるだけまし」な制度ではある。でもこれだけで家族の生活を支えられる水準ではない、というのが現実だ。

遺族年金だけでは足りない。生命保険との役割分担

不足額を補うのが生命保険(死亡保障)の役割だ。

仮に月15万円の不足が20年続けば、単純計算では3,600万円の差になる。ただし実際には、遺族年金の変化、配偶者の就労、住宅ローン、教育費、貯蓄額などで必要保障額は大きく変わる。

ただし、以下の要素で必要額は大きく変わる。

  • 妻が働いているか(共働きか専業主婦か)
  • 住宅ローンに団信が付いているか
  • 子どもの進学プランはどうか
  • 貯蓄・金融資産がどれくらいあるか

「団信があればローンは消える」「妻が働ければ生活費は半減する」——こうした条件次第で、必要な死亡保障額は数千万円単位で変わる。

住宅ローンと団信の関係は「がんと住宅ローン|団信・支払い・競売リスクをFPが解説」でも解説している。

がんと診断されたら、今すぐ確認してほしいこと

受給見込み額の目安は、以下のシミュレーターで10秒確認できる。会社員・自営業別に試算できるため、まず自分のケースを把握してほしい。

【遺族年金シミュレーター】会社員・自営業別の受給額を10秒診断

より詳細な試算は、ねんきんネットまたは年金事務所で確認できる。

あわせて確認したいのが、現在加入している生命保険の死亡保障額だ。

  • 死亡保険金はいくらか
  • がん診断給付金は含まれているか
  • 保険料払込免除特約はついているか

がん治療中に保険を見直すことは難しい(告知義務の問題)。だからこそ、診断を受けた直後・まだ元気なうちに確認することが重要だ。

保険全体の確認は「がんになったら使えるお金の制度一覧」も参照してほしい。

FPからひとこと

がんになると、多くの人が高額療養費・傷病手当金・障害年金を調べる。でも遺族年金を調べる人は少ない。

「亡くなった後のことを考えるのが怖い」という気持ちはわかる。でも遺族年金の確認は、残された家族への準備でもある。

月15万円の現実を知った上で、生命保険が足りているかどうかを確認してほしい。そこで初めて「備えができている」と言えるはずだ。

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この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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