がんになったら個人事業主は傷病手当金が出ない|会社員との差と使える制度・保険の備えをFPが解説

がんと告知された瞬間、会社員なら「傷病手当金がある」と思える。
個人事業主には、その選択肢がない。
休んだら収入はゼロ。国民健康保険に傷病手当金はないからだ。
「知ってたけど、まさか自分がなるとは」という声を、相談の現場で何度も聞いてきた。保険を見直そうと思っていた矢先に診断が出た、という人もいる。がんになってからでは、もう保険には入れない。
この記事では、個人事業主・フリーランスが「がんになったとき」に直面するお金の現実と、今からできる備えを整理する。
会社員と個人事業主、がんになったときの収入の差
まず前提として、この差を正しく理解してほしい。
会社員が病気で働けなくなった場合、健康保険から傷病手当金が支給される。支給額は標準報酬日額の3分の2、最大で1年6ヶ月受け取れる。標準報酬月額30万円程度なら、おおむね月20万円前後が支給されるイメージだ。
個人事業主が加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金はない。
新型コロナ禍では特例として傷病手当金を支給していた自治体もあったが、多くはすでに終了している。現在も独自制度を設けている自治体は限定的なため、基本的には「傷病手当金はない」と考えて備えておくべきだ。最新の制度は、お住まいの自治体へ確認してほしい。
つまり個人事業主が3ヶ月仕事を休めば、3ヶ月分の収入がそのまま消える。治療費がかかるうえに、収入まで止まる。この二重の打撃が、個人事業主のがん罹患を家計上の危機にする。
個人事業主に使える公的制度はあるか
「じゃあ何もないのか」というとそうではない。ただし、会社員ほど手厚くはない。
高額療養費制度
治療費の自己負担に上限を設ける制度で、個人事業主も使える。所得区分によって上限額は変わるが、ひと月の医療費が一定額を超えた分は戻ってくる。
ただし対象は医療費のみ。差額ベッド代・食事代・交通費・仕事ができない間の生活費はカバーされない。詳しくは「高額療養費があるから医療保険はいらない?入院経験FPが見た3つの盲点」を参照してほしい。
障害年金
がんによって日常生活や就労に支障が出る程度になれば、障害年金の対象になる可能性がある。国民年金に加入している個人事業主でも申請できる。
ただし認定基準は厳しく、申請から受給まで時間もかかる。「すぐに収入になる」制度ではない点に注意が必要だ。詳しくは「がんでも障害年金はもらえる?受給条件・金額・申請方法をFPが解説」を参照してほしい。
小規模企業共済の貸付制度
小規模企業共済に加入していれば、掛金の範囲内で低利の貸付を受けられる。病気や怪我で事業が続けられない場合も対象になる。緊急時の手元資金として機能する可能性があるので、加入している人は確認しておきたい。制度の概要は「小規模企業共済とは|フリーランス・個人事業主の退職金制度をFPが解説」で解説している。
傷病手当金の代わりになるものは存在しない
正直に言う。会社員の傷病手当金に相当するものを、公的制度の中に個人事業主向けに見つけることはできない。それが現実だ。
だからこそ、民間の備えが意味を持つ。
個人事業主のがんに必要な保険の考え方
保険で補うべきは「治療費」だけではない。むしろ「収入が止まる期間の生活費」をどう確保するかが、個人事業主の場合は核心になる。
就業不能保険・所得補償保険
働けない状態が続く間、毎月一定額が受け取れる保険だ。傷病手当金の代わりとして、個人事業主が最初に検討すべき保険といえる。
注意点は免責期間の設定だ。多くの商品では「60日間は支給なし」といった条件がある。がんの初期治療が60日以内に終わるケースも少なくないため、短期の入院・治療には対応できないことがある。「就業不能保険は必要か|いちばん働けなくする病気を、その保険は守ってくれない」も合わせて読んでほしい。
がん保険の診断一時金
がんと診断された時点でまとまった金額が受け取れる。治療費にも生活費にも使える自由度の高さが、個人事業主にとって使いやすい理由だ。
ただし保険商品によって、良性腫瘍・上皮内新生物の扱いが大きく異なる。「がんと診断されたのに出なかった」というトラブルの多くはここに起因する。証券の「上皮内新生物」欄の確認は必須だ。詳しくは「がん保険なのに給付金が出ない理由|診断給付金・上皮内がん・免責期間の落とし穴」を参照してほしい。
医療保険の通院特約
がんの治療は外来で行われることが増えている。抗がん剤の点滴、ホルモン療法の通院、定期検査。入院期間は短くなった分、通院が長期化している。
通院給付金が出る設計かどうかは、がんの実態に合わせた保険選びのポイントになる。
いくら備えればいいか
個人事業主の場合、「収入が止まる期間」を想定して逆算するのが現実的だ。
たとえば月の生活費が25万円で、治療期間が6ヶ月と想定するなら、150万円の手元資金または保険給付が必要になる。これに治療費の自己負担(高額療養費後でも数万〜十数万円)が加わる。
事業の固定費(家賃・外注費・設備リース料など)が別途かかる場合は、その分も上乗せが必要だ。
「いくら必要か」は人によって大きく違う。だからライフプランで個別に試算することが、保険の過不足をなくす一番の近道になる。
まとめ
個人事業主ががんになったとき、国からもらえるお金は会社員より少ない。傷病手当金がない分、自分で備えるしかない。
使える公的制度は高額療養費・障害年金・共済貸付くらいで、「収入が止まる」問題の解決にはならない。その穴を埋めるのが、就業不能保険・がん保険の診断一時金・通院給付だ。
ただし、保険はがんと診断されてからでは入れない。入れたとしても、条件付きや保険料が大幅に上がるケースが多い。
「健康なうちに整えておく」以外に方法がない、というのが現実だ。
今の保険が個人事業主のリスクに合っているかどうか、一度確認してみてほしい。証券の写真を送ってもらえれば、無料で診断する。
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かながわFP相談所(奈良県橿原市)は保険・NISA・住宅ローン・ライフプランを中立な立場でサポートする独立系FPです。橿原市・奈良市・大和高田市・桜井市など奈良県全域+全国オンライン対応。

この記事を書いた人
かながわFP相談所
AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員
奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。
奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。
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