がんでも障害年金はもらえる?受給条件・金額・申請方法をFPが解説

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療・保険アドバイスではありません。治療方針・費用については担当医に、保険の選び方については専門のFPにご相談ください。薬剤費・医療費は参考値であり、実際の費用は個人の状況により異なります。
がんでも障害年金を受給できる可能性があることを解説するFP監修の記事アイキャッチ画像

「障害年金って、身体障害者の制度でしょ?」
相談現場で何度聞いたか分からない。

違う。がんでも障害年金は受給できる。しかも「がんそのもの」だけでなく、抗がん剤の副作用による倦怠感や、人工肛門の造設、日常生活への支障も対象になる。

なのに、がん患者の多くがこの制度を知らない。知っていても「自分は該当しない」と思い込んでいる。

FPとして1,000件超の相談を受けてきた中で、「もっと早く教えてほしかった」と言われた制度の筆頭がこれだ。

障害年金とは何か。3分で分かる基本

障害年金は、病気やケガで生活や仕事に制限が出た場合に受け取れる公的年金だ。老齢年金(65歳からもらう年金)とは別の制度で、現役世代でも受け取れる。

障害年金には2種類ある。

障害基礎年金(国民年金に加入していた人が対象)

  • 2級:年間約83.2万円(2025年度)
  • 1級:年間約104.0万円(2級の1.25倍)

障害厚生年金(厚生年金に加入していた人が対象)

  • 3級〜1級:報酬比例部分(給与や加入期間によって変わる)
  • 3級の最低保証額:年間約61.2万円(2025年度)

つまり会社員であれば、障害基礎年金+障害厚生年金の両方を受け取れる可能性がある。自営業・フリーランスの場合は障害基礎年金のみだが、それでも年間83万円は大きい。

がんで障害年金を受給するための3つの条件

条件①:初診日に年金に加入していること

がんの「初診日」に国民年金または厚生年金に加入していることが必要だ。初診日とは、がんの症状で初めて医師の診察を受けた日のこと。健康診断で異常を指摘されて再検査を受けた場合は、その再検査の日が初診日になるケースもある。ポイントは「がん確定日」ではなく「初めて医療機関を受診した日」であること。ここを間違えると申請が通らない可能性がある。

条件②:保険料を納めていること

初診日の前日時点で、以下のいずれかを満たしている必要がある。

  • 加入期間の3分の2以上、保険料を納付(免除期間を含む)していること
  • 直近1年間に未納がないこと

会社員で給与天引きされている人は、ほぼ問題なく満たしている。注意が必要なのは、過去に国民年金の未納期間がある場合だ。

条件③:障害認定日に障害の状態であること

障害認定日とは、原則として初診日から1年6カ月後の日だ。この時点で「日常生活や労働に制限がある状態」であれば、障害等級に該当する可能性がある。ただし、人工肛門の造設や新膀胱造設、喉頭全摘出など、一部のケースでは初診日から1年6カ月を待たずに障害認定日が到来する特例がある。

「がんで障害年金」は珍しくない

がんの障害年金は、以下のような状態が対象になりうる。

3級(労働に制限がある状態)

  • 抗がん剤の副作用で週5日のフルタイム勤務が困難
  • 倦怠感が強く、以前と同じ業務量をこなせない
  • 人工肛門(ストーマ)を造設し、日常生活や就労に支障が生じている

2級(日常生活に著しい制限がある状態)

  • 治療の影響で家事や身の回りのことに支援が必要
  • 外出が困難で、ほとんど自宅で過ごしている

1級(日常生活が不能に近い状態)

  • ベッドで過ごす時間が大半で、常に介助が必要

重要なのは、がんのステージだけで決まるわけではないということ。ステージが早期でも、抗がん剤の副作用が重ければ3級に該当することがある。逆にステージ4でも、治療が奏功して日常生活に支障がなければ認定されないこともある。

傷病手当金が終わった後の「空白」を埋める制度

がんで休職した場合、最初の1年6カ月は傷病手当金(給与の約3分の2)が支給される。この制度についてはがんになったら傷病手当金はもらえる?金額・期間・注意点をFPが解説で詳しく解説している。

問題は、傷病手当金が終わった後だ。治療が長引けば、収入がゼロになるタイミングが来る。ここで障害年金が「つなぎの収入」として機能する。

傷病手当金と障害年金は制度上重複する期間が生じることがある。ただし障害厚生年金を受給する場合は傷病手当金が減額または停止されることがあるため、実際の支給額は個別に確認が必要だ。

なぜ申請しない人が多いのか

①「がんは障害じゃない」という思い込み
「障害」という言葉のイメージが強すぎる。身体障害者手帳を持っている人だけの制度だと思っている人が非常に多い。実際は手帳がなくても申請できる。

②「仕事を辞めないと受給できない」という誤解
これもよくある。障害年金は、働きながらでも受給できる場合がある。「仕事を完全に辞めていないと対象外」ではない。出勤はしていても、以前と比べて業務量が大幅に減っている、短時間勤務に切り替えている、といった状態でも3級に該当するケースはある。

③主治医が教えてくれない
医師は治療の専門家であって、年金制度の専門家ではない。障害年金の存在を知っていても、「この患者さんは該当するか」まで判断してくれることは少ない。

④手続きが複雑
申請には「病歴・就労状況等申立書」の作成や、主治医に「診断書」を書いてもらう必要がある。この診断書の記載内容が認定を大きく左右するため、専門的なサポートが重要になる。

申請の流れ

  1. 年金事務所に相談(初診日の確認・納付要件の確認)
  2. 主治医に診断書の作成を依頼
  3. 病歴・就労状況等申立書を作成
  4. 必要書類を揃えて年金事務所に提出
  5. 審査(一般的には数カ月かかる)
  6. 決定通知→受給開始

傷病手当金の期限が迫っている場合は、早めに動くことが重要だ。

申請のカギを握るのは「申立書」と「診断書」の具体性

がんの障害は数値化しにくい。だからこそ、申立書には「どれだけ生活や仕事に支障が出ているか」を具体的に書く必要がある。

たとえば「体がだるくて仕事がつらい」では認定されにくい。「以前は1日8時間立ち仕事ができたが、治療後は2時間が限界。残りの時間は休憩室で横にならないと続けられない。収入は以前の3割に減った」——このレベルの具体性が求められる。

日常生活の変化も重要だ。ペットボトルのふたが開けられなくなった、買い物に行く体力がなくなった、食事の量が半分以下に減った。こうした「小さな変化」の積み重ねが、認定の判断材料になる。

診断書を書く主治医には、仕事や生活への支障を具体的に伝えておくことが大切だ。医師は診察室の中でしか患者の状態を見ていない。自分から伝えなければ、診断書に反映されない。メモを添えて渡すのも有効な方法だ。

なお、手続きに不安がある場合は、障害年金に詳しい社会保険労務士に相談するのも一つの手だ。がんの障害年金は認定基準が複雑で、診断書の記載内容によって結果が大きく変わるため、専門家のサポートが有効なケースが多い。病院のがん相談支援センターやソーシャルワーカーに橋渡しを依頼する方法もある。

FPとして伝えたいこと

がんの相談を受けていて、最も悔しいのは「制度を知らなかった」という一言だ。

がん保険に入っていなくても、障害年金は受け取れる可能性がある。がん保険の診断一時金が100万円だとすると、障害厚生年金3級でも年間約61万円が、認定が継続する限り支給される可能性がある。長期化すればするほど、障害年金の方が家計を支える力は大きい。

もちろん、障害年金はがん保険の代わりにはならない。がん保険は診断直後の一時金として即座に使える。障害年金は申請から受給まで時間がかかる。両方の特性を理解した上で、家計全体の設計をすることが大切だ。

実際の相談現場では、がん保険の請求はしていても障害年金を申請していない方が少なくない。まずは「自分は対象外だ」と決めつけず、年金事務所や専門家に確認してみてほしい。

がんとお金の問題を全体像から整理したい方はがんになったらお金はどうなる?治療費・保険・収入減への備えをFPが解説も参考にしてほしい。

就業不能保険との役割分担については就業不能保険は必要か——「いちばん働けなくする病気」を、その保険は守ってくれないで解説している。

年金制度全体の仕組みについては年金は本当に頼れるのか?遺族・障害年金と必要保障額の考え方もあわせてご覧いただきたい。

まとめ

がんでも障害年金は受給できる。条件は「初診日に年金加入」「保険料納付」「障害認定日に該当する状態」の3つ。

ステージだけで決まるものではなく、抗がん剤の副作用や人工肛門の造設など、日常生活への影響が総合的に判断される。

傷病手当金が終わった後の「空白」を埋める制度として、知っておくだけで選択肢が変わる。

「自分は該当するか分からない」という方は、まず年金事務所に相談してみてほしい。そして、がんとお金の問題全体をどう整理すべきか迷っている方は、LINEからご相談ください。

出典:
日本年金機構「障害認定基準 第16節 悪性新生物による障害」(令和4年4月1日改正版)
日本年金機構「障害年金の制度」
国立がん研究センター東病院 坂本はと恵氏「がん患者さんにぜひ利用して欲しい障害年金」
※個別の認定判断は診断書内容・症状・就労状況で変動します。具体的な受給可否については年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。

かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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