SCHDは新NISAでも税金がかかる?配当の10%が戻らない理由をFPが解説

SCHD(米国高配当ETF)を新NISAで買う際の税金を解説するアイキャッチ。非課税のはずが10%引かれる理由、新NISAと課税口座の手取り比較、配当と取り崩しの使い分けを扱う

数年前まで、投資の相談で最初に出てくる言葉はほぼ決まっていた。「オルカンで積み立てています」だ。

それが最近は、そこに一言足されるようになった。「SCHDも気になっています」。

SCHDは米国の高配当株ETFだ。2024年の秋から冬にかけて、このETFに投資する日本の投資信託が相次いで設定された。楽天が2024年9月18日、SBIが同年12月20日。設定から2年経たないうちに、2本合わせた純資産は5,000億円に迫る規模まで育っている。

一時の流行で終わらなかった、ということだ。

ただ、ひとつ気になっていることがある。「新NISAで買えば税金はかからない」と思ったまま買っている人が、たぶん少なくない。

日本の税金はかからない。だが米国の税金は、NISAでも引かれ続ける。しかもその分は、取り戻す手段がない。

SCHDとは、そもそも何なのか

SCHDは、正式にはシュワブ・米国配当株式ETFという。ダウ・ジョーンズ US ディビデント100インデックスへの連動を目指す、米国籍の上場投資信託だ。運用するのはチャールズ・シュワブ・インベストメント・マネジメント。

名前のとおり、配当を出す米国企業のうち100社ほどを選んで持つ。単に利回りが高い銘柄を並べるのではなく、配当を継続的に払ってきた実績や財務の健全性でふるいにかける設計になっている。ETF自体の管理報酬は年0.06%程度と、かなり低い。

日本から買う方法は2つある

米国ETFをそのまま買う

証券会社の外国株取引で、SCHDを直接買う方法だ。米ドルでの売買になる。

投資信託版を買う

楽天とSBIが出している、SCHDに投資する国内の投資信託を買う方法だ。円で買えて、少額から積み立てられる。日本の投資家に一気に広がったのは、こちらの登場が大きい。

どちらもNISAの成長投資枠では買えるが、つみたて投資枠では買えない。ここは押さえておきたい。

楽天SCHDとSBI・SCHDはどちらを選ぶ?

よく聞かれるので、コストを並べておく。いずれも交付目論見書に記載されている数字だ。

楽天・シュワブ・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)は、信託報酬が年0.1238%(税込)。投資先のETFで年0.06%程度の報酬が引かれるが、運用会社がその相当額をファンドに充当する仕組みのため、実質的に負担する運用管理費用も年0.1238%程度とされている。

SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)は、信託報酬が年0.0627%(税込)。これに投資先ETFの年0.06%程度が加わり、実質的な負担は年0.1227%程度となる。

信託報酬だけを見るとSBIがわずかに低い。ただし楽天版はETF部分を実質的に補填する仕組みを採っているため、実質負担で比べると差は0.0011ポイントしかない。100万円を1年持って11円の違いだ。

つまり、コストで選ぶ段階はもう終わっている。どちらも購入時手数料はなく、信託財産留保額もない。

決め手になるとすれば、使っている証券会社との相性や、ポイントサービス、決算月の違いといったところだろう。長期で持つものなので、口座を分散させずに管理しやすいほうを選ぶ、という判断で十分だと考えている。

「新NISAなら税金ゼロ」は成り立たない

米国株の配当には、まず米国で原則10%の税金が引かれる。日米租税条約が適用された場合の税率だ。証券会社への届出が済んでいないなど条約が適用されない状態では、30%が引かれることもある。

そのうえで、日本でも20.315%が課される。これが二重課税と呼ばれる状態になる。

日本の税制は、この重なりを調整する仕組みを用意している。ところが、その仕組みがNISAでは働かない。

課税口座なら、調整は自動で入る

2020年1月から、国内公募投資信託等の二重課税調整制度が始まっている。国内の投資信託の普通分配金や国内上場ETF・REITの分配金について、外国で引かれた税額分を日本の源泉所得税から差し引く調整が、自動で行われる仕組みだ。

投資家が確定申告をする必要はない。証券会社の側で計算して処理してくれる。

ただし控除の対象は所得税だけで、住民税5%は対象外だ。全額がきれいに戻るわけではない。

NISA口座は、この制度の対象から外れている

そして肝心の点。非課税口座、つまりNISA口座は、この二重課税調整の対象外とされている。

理屈はこうだ。NISAでは日本の税金が最初からかからない。日本で課税されていない以上、そこから差し引くべき税金が存在しない。だから調整のしようがない。米国株の配当を直接受け取る場合の外国税額控除も、同じ理由で使えない。

NISAで米国高配当を持つと、米国で引かれた10%は引かれっぱなしになる。

数字にすると、こういうことになる

分配金100円で単純化して並べてみる。

NISA口座の場合。米国で10円引かれて、日本の税金はゼロ。手取りは90円。

課税口座の場合。米国で10円引かれ、日本で所得税15.315円・住民税5円がかかる。ここで二重課税調整が入り、外国税の10円分が所得税から差し引かれる。所得税の負担は5.315円まで下がる。手取りはおよそ79.7円。

※これは仕組みを理解するための概算であり、実際は外国税額やファンドの処理方法、その年の所得状況などにより一致しない場合がある。

結論から言えば、NISAのほうが手取りは大きい。だからNISAで買うこと自体は、多くの人にとって理にかなっている。

ただ「非課税だから満額もらえる」ではない。配当利回りが仮に3%なら、実効的には概算で2.7%程度になる。100万円分を持っていれば、年3万円の配当のうち3,000円が米国側に残る計算だ。

そして高配当型は、その性質上、分配金の絶対額が大きい。配当金額が大きくなるほど、米国で差し引かれる税額も比例して増える。高配当を選ぶほど、この穴が効いてくるという構造だ。

高配当は「増えない投資」なのか

「配当を出す分だけ、値上がりしない」という言われ方をよく聞く。

これは事実だ。配当として払い出された分、基準価額はその分下がる。手品ではないので、当然そうなる。

ただ「だから損」とは言い切れない。分配金を再投資すれば、理屈のうえでは払い出さなかった場合に近づく。差が出るのは、税金と手数料と、再投資の手間の部分だ。

参考までに、両ファンドの分配実績を挙げておく。1万口あたり税引前の数字だ。

楽天版は2025年2月に85円、5月に70円、8月に80円、11月に85円、2026年2月に90円。直近1年の累計は325円。2026年2月末の基準価額12,279円で単純計算すると、年2.6%程度になる。

SBI版は2025年3月に0円、6月に62円、9月に85円、12月に90円、2026年3月に95円。設定来の累計は332円だ。

これは過去の実績であって、将来の分配や利回りを約束するものではない。

配当で受け取るか、自分で取り崩すか

この商品を検討している方に、必ず聞くことがある。

「その配当、何に使いますか」

老後の生活費に充てるつもりなら、自動で現金が入ってくる設計には意味がある。売却の判断をしなくていい。相場が下がっている局面で「今売っていいのか」と迷わずに済む。この心理的な効果は、数字に出ないが実際には大きい。

一方で、まだ現役で、入ってきた配当をそのまま再投資するつもりなら、話は変わる。配当を出すたびに米国で10%が抜ける。使わないお金のために、毎回1割を払っていることになる。

その場合は、分配を出さないタイプで運用して、必要になったときに必要な分だけ売る、いわゆる定率取り崩しのほうが素直だ。売るタイミングも金額も、自分で決められる。

どちらが優れているという話ではない。取り崩しの判断を自分でやりたいか、仕組みに任せたいか。ここは性格と生活設計の問題だ。

私自身、相談では「利回りは何%か」ではなく「その配当を何に使う予定か」を最初に伺っている。商品より先に出口を決める。この順番だけは変えないようにしている。

買う前に確認しておきたい3つのこと

為替ヘッジはない

投信版はいずれも為替ヘッジを行わない設計だ。ドル建ての資産なので、円高に振れれば円換算の評価額は目減りする。配当が順調でも、為替で相殺されることはある。

成長投資枠を使う

つみたて投資枠では買えないため、年間240万円の成長投資枠を消費する。他に成長投資枠で買いたいものがあるなら、順番を考えておきたい。

分配金が出ない期もある

高配当という名前から、毎回必ず分配があると思われがちだ。だが目論見書には、分配対象額が少額の場合は分配を行わない場合がある、と明記されている。実際、SBI版の第1期(2025年3月)の分配金は0円だった。

また、投資信託の分配金は、必ずしも運用で得た利益だけから出ているとは限らない。元本の払い戻しに当たる部分が含まれることもある。この場合、受け取っているようで自分の元本が戻ってきているだけ、ということが起きる。

運用報告書で分配金の原資は確認できる。年に一度でいいので、目を通す習慣をつけてほしい。

まとめ

SCHDが良い悪いという話ではない。整理するとこうなる。

米国高配当をNISAで持つと、日本の20.315%は非課税になるが、米国の原則10%は残る。この10%は、NISAである限り取り戻せない。

課税口座なら二重課税調整が自動で入るが、住民税分は対象外で、そもそも国内課税がかかる。手取りで見ればNISAのほうが有利だ。

だから結論は「NISAで持つのは合理的。ただし非課税は満額ではない」になる。

そのうえで問われるのは、配当という形で現金を受け取る設計が、自分の生活に必要かどうかだ。使う予定のない配当に毎回1割の税を払うのか、それとも使うときに自分で売るのか。

商品を選ぶ前に、出口を決める。順番はいつもこれだと思っている。


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かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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