認知症のお金の相談は誰にする?FP・司法書士・弁護士・税理士の違いを解説

認知症のお金の相談先を比較。FP・司法書士・弁護士・税理士の役割の違いを図解したアイキャッチ画像

「親のお金が心配になってきた。でも、どこに相談すればいいのか分からない」——認知症とお金の問題で、最初につまずくのがここだ。

この分野は介護・法律・税金・金融の4つの領域にまたがっている。それぞれに専門家がいて、法律上できることの範囲が決まっている。相談先を間違えると「それは当方では扱えません」と言われ、また振り出しに戻る。しかも認知症対策には期限がある。回り道をしている間に、打てる手が減っていく。

この記事では、誰が何をできるのかを先に一覧で示し、そのうえで相談前に整理しておくこと、相談の場で実際に決めることを順に解説する。制度そのものの解説は認知症で口座が凍結される「資産凍結」とは?にまとめている。

この記事のポイント

  • 認知症とお金の相談先は「介護・法律・税金・金融」で分かれており、一つの窓口では完結しない
  • 相談の入口は「段階」で変わる。介護が始まっているなら地域包括支援センター(公的・無料)、まだ備えたい段階ならFP
  • FPができるのは家計・資産の全体設計まで。法律手続きの実行と税務は各士業の領域だが、そこへの橋渡しもFPの役割
  • 相談前に「資産の一覧・本人の意思能力・家族の状況」の3つを整理しておくと話が一気に進む
  • 使える手段は本人の意思能力があるかどうかでほぼ決まる。順番を間違えると選択肢が減る

結論:困りごと別の相談先【早見表】

まず結論から示す。あなたの「困っていること」に対応する相談先はこれだ。

困っていること相談先
介護施設を探したい/要介護認定を受けたい地域包括支援センター(無料)
家族信託を組みたい/後見の申し立てをしたい司法書士
相続税や贈与税がいくらかかるか知りたい税理士
きょうだいで揉めている/トラブルになっている弁護士
親の口座から日常のお金を引き出せるようにしたい取引先の銀行(代理人の届出)
何から手をつけるべきか分からない/全体を整理したいFP
そもそも対策が必要なのか判断できないFP

⚠️ すでに介護が始まっているなら、まず地域包括支援センターへ

市区町村が設置する公的な相談窓口で、相談は無料。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどが配置され、ご本人だけでなくご家族の相談も受け付けている。要介護認定の手続き、ケアマネジャーの手配、成年後見制度の窓口案内まで、介護の入口はここに集約されている。
民間のどの専門家よりも先に、まずここへ行ってほしい。お住まいの市区町村名と「地域包括支援センター」で検索すれば担当地区の窓口が分かる(地域包括ケアシステム・厚生労働省)。

相談先ごとの役割分担【詳細比較】

それぞれが「できること」と「できないこと」を整理した。

相談先得意なことできないこと費用感
地域包括支援センター
(市区町村が設置)
介護保険の入口。要介護認定の相談、ケアマネの紹介、権利擁護の初期相談、成年後見の窓口案内資産運用や保険の設計、法律手続きの実行無料
銀行・証券会社代理人の届出手続き、その金融機関で扱う信託商品の案内他社資産を含めた全体設計、中立的な比較手続きは無料〜。商品は所定の手数料
司法書士成年後見の申立書類作成、家族信託の契約書作成、不動産登記税額の計算・申告、争いがある案件の代理(認定司法書士の範囲を超える場合)業務ごとに数万円〜数十万円が一般的
弁護士法律事務全般。親族間で争いがある場合、財産をめぐるトラブルが起きている場合税務申告、家計全体の資金計画相談料+着手金・報酬。事務所により幅がある
税理士生前贈与の税額試算、相続税の申告、税務上の有利不利の判断法律手続きの実行、保険・運用の設計申告報酬は財産額に応じて変動
FP家計・資産全体の棚卸し、介護費用の見通し試算、保険の代理人指定の確認、対策が必要かどうかの見極め、適切な士業への橋渡し法律手続きの実行、税務相談・申告相談所により異なる

※費用感は一般的な目安であり、事務所・地域・案件の内容によって異なる。

判断フローチャート──あなたはどこから始めるべきか

相談の入口は「ご本人が今どの段階にいるか」で変わる。使える手段が段階で決まってしまうからだ。当てはまるところから読んでほしい。

ご本人(親)の状態は、今どれに近いですか?

A:元気で、判断能力に不安はない

選択肢がもっとも広い段階。今なら全部の手が使える。

① 資産の一覧をつくる(預金・証券・保険・不動産)

FPに相談——全体設計と「そもそも対策が要るか」の見極め

③ 並行して、銀行の代理人の届出・保険の代理人指定を確認(ほぼ無料)

④ 必要と判断された対策だけ、司法書士・税理士へ依頼する

B:物忘れが気になる/診断は受けたが、意思確認はできる

対策に残された最後の期間。ここを逃すと選択肢がCまで一気に減る。急いでほしい。

① 今日できることを先に片付ける(代理人の届出・保険の代理人指定・口座の整理)

FPに相談——資産の全体像と優先順位を短期間で整理する

③ 家族信託・任意後見が必要なら、速やかに司法書士へ

④ 介護が視野に入っていれば、地域包括支援センターにも並行して相談

C:意思確認が難しい/すでに介護が始まっている

打てる手は限られるが、ゼロではない。順番が変わる。

地域包括支援センター(無料)——介護の見通しと必要額を把握する

FPに相談——介護費用をどう賄うか、他の家族の資産や保険で何がカバーできるかを設計

③ 口座が凍結されている場合、法定後見の申し立ては司法書士・弁護士へ

④ 争いが生じている場合は弁護士へ

※A〜Cのいずれでも、銀行の代理人の届出と保険の代理人指定の確認は、相談の予約を待つ間に進められる。費用がほとんどかからず効果は小さくないので、先に手をつけてよい。

なぜ「どこに相談すればいいか」で迷うのか

ここまでの表を見て「担当が細かく分かれすぎでは」と感じたかもしれない。だがこれは法律で業務範囲が定められていることによる。弁護士以外の者が報酬を得て法律事務を扱うことは弁護士法72条で、税務相談や申告の代理は税理士法で、登記手続きの代理は司法書士法で、それぞれ制限されている。

そのうえ、認知症とお金の困りごとは一つの要望が複数の領域にまたがる。たとえば「親の施設入居費用を、親の預金から払いたい」という要望には、次の論点が同時に発生する。

  • どの施設に、いくらかかるのか(介護の領域)
  • 本人の意思確認ができない場合、誰がどう引き出すのか(金融・法律の領域)
  • 子が立て替えた場合、贈与とみなされないか(税金の領域/名義預金の考え方はこちら
  • 実家を売って充てるなら、誰が売却できるのか(法律・不動産の領域)

つまり「良い専門家を一人見つければ全部解決する」という発想では前に進まない。誰が何を担当するのかを知り、順番に相談していくのが最短ルートになる。

FPにできること・できないこと

自分の立場についても、はっきり書いておく。

FPにできること

  • 親の資産がどこに・どれだけあるかの棚卸し(預金・証券・保険・不動産)
  • 介護費用や施設費用の試算と、家計全体への影響の可視化
  • 加入中の保険に指定代理請求特約や契約者代理制度が付いているかの確認
  • 運用資産(NISA・投資信託)を高齢期にどう畳んでいくかの出口設計
  • そもそも対策が必要かどうかの見極めと、必要な士業への橋渡し

FPにはできないこと

  • 家族信託契約書の作成や成年後見の申し立てといった法律手続きの実行
  • 個別の税額計算や相続税の申告といった税務相談・税務代理

多くの解説記事は、成年後見や家族信託といった手続きの担い手から説明を始める。だが実際には、手続きが必要かどうかを決める前の段階で立ち止まっている人のほうが多い。この段階で司法書士や弁護士を訪ねても依頼する手続きが決まっておらず、銀行に行けばその銀行が扱う商品の枠内の話になる。全体像を描いて必要性を見極めるところが、FPの持ち場だ。

そして方向が決まったら、実行は各専門家に渡す。論点が整理された状態で引き継げると、専門家側も本題から始められるため、結果的に時間も費用も抑えやすい。もっとも、どこに依頼するかを決めるのはご本人・ご家族であり、FPの役割は選択肢と判断材料を用意することであって、特定の事務所へ誘導することではない。

なお、無料相談窓口と独立系FPの違いについてはFP相談の窓口比較で整理している。

相談に行く前に整理しておく3つのこと

どの専門家に相談するにせよ、次の3つが手元にあるかで話の進み方がまったく変わる。何も持たずに行くと、初回はヒアリングだけで終わる。

① 資産の一覧──どこに、何が、いくらあるか

銀行・証券会社・保険会社ごとに口座や契約を一覧にする。金額は概算で構わない。通帳やネット口座の残高画面、保険証券を集めるだけでも十分な出発点になる。

この作業にはもう一つ意味がある。凍結されてから資産を探すのは、何倍も大変になるということだ。本人に聞けるうちに聞いておく。当相談所の家系図&相続人整理ツールを使えば、相続人の整理と相続税の概算まで無料で確認できる。

② 本人の状態──意思能力があるかどうか

最も重要な分岐点だ。使える手段はここでほぼ決まる。

  • 意思能力がある→ 家族信託・任意後見・生前贈与・代理人の届出など、選択肢が広い
  • 意思能力が失われている→ 正規の手段は法定後見(成年後見制度)がほぼ唯一になる

医学的な判定は医師の領域だが、相談の場では「今どのあたりか」を共有できるだけで提案内容が変わる。診断を受けていても症状が軽く意思確認ができる段階なら、まだ選択肢が残っている場合がある。この移行期間が、対策に残された最後の時間になる。

③ 家族の状況──誰が関わり、合意はあるか

きょうだいが複数いる、遠方に住んでいる、実質的に一人が介護を担っている——こうした事情は、どの対策を選ぶかに直結する。

特にきょうだい間の合意がないまま手続きだけ進めると、後から揉めやすい。「親の口座を一人が管理していた」という事実は、相続の場面で不信の火種になりやすい。誰が何をするかを最初に共有しておくことが、結果的に家族を守る。

相談の場で、実際に決めることになる4つの論点

相談というと「制度を教えてもらう場」と思われがちだが、時間を使うのはここからだ。制度の知識ではなく、自分の家の場合どうするかを決めていく作業になる。

論点1:日常のお金を、誰がどう払うか

介護費用は毎月発生する。本人の口座から出せなくなったとき、誰が立て替え、どう精算するのか。立て替えが長期化すると金額が膨らみ、贈与や特別受益の議論に発展することもある。記録を残す方法まで含めて決めておくのが実務的だ。

その備えとして最初に検討したいのが、取引先の金融機関に代理人を届け出ておく仕組みだ。ただし名称・利用条件・代理できる範囲は金融機関によって異なる。「代理人届」「代理人カード」「代理人指名手続き」など呼び方もさまざまで、本人の判断能力が低下した後の利用を想定していない商品もある。必ず取引先の金融機関に、その口座で何ができるのかを個別に確認してほしい。

論点2:運用資産をどうするか

見落とされやすいのがここだ。凍結された口座の投資信託は、相場が下落しても売却できない。回復を待てる現役世代と違い、高齢期は「使う時期に使えない」ことがそのまま損失になり得る。運用を続けるのか、段階的に現金化するのか、誰が判断するのか。この出口設計はFPが最も力になれる部分でもある(高齢世代のNISAと口座凍結リスク)。

論点3:保険の代理人指定があるか

契約中の生命保険に指定代理請求特約や契約者代理制度が付いているかを確認する。本人が意思表示できないときに、指定した家族が給付金を請求したり契約手続きを代理できる仕組みだ。多くは無料で付加でき、加入中の保険に後から追加できる場合もある。保険証券があれば今日でも確認できる項目だ。代理できる範囲や名称は保険会社・商品によって異なるため、証券とあわせて各社に確認してほしい。

論点4:どこまでやるか──費用と自由度のトレードオフ

対策は「やればやるほど良い」ものではない。

たとえば家族信託は万能ではない。凍結の予防効果は高いが、組成には相応の初期費用がかかり、設計を誤ると身上監護(施設入居契約など本人の生活に関する手続き)はカバーできない。不動産がなく預金中心の家庭であれば、代理人の届出と保険の代理人指定だけで大部分が足りることもある。資産の中身によって、適切な線引きは変わる。

一方の法定後見は本人が亡くなるまで続き、報酬も継続的に発生する(成年後見はやわかり・厚生労働省成年後見制度・成年後見登記制度Q&A・法務省)。「うちはどこまでやるべきか」を決めるのが、相談の実質的なゴールだと考えてほしい。

よくある「遠回り」の4パターン

相談を受けていて、もったいないと感じる進み方には共通の型がある。個別の家庭の話ではなく、繰り返し目にするパターンとして挙げる。

パターン①:全体像がないまま、個別の商品や契約の見積もりから入る

「家族信託が良いらしい」と聞いて、いきなり組成の見積もりを取りに行くケース。資産の全体像と本人の意向が整理されていないと、そもそも必要なのかを判断できない

パターン②:凍結されてから相談に来る

最も多く、最も惜しいパターン。この段階で残る正規の手段は法定後見にほぼ限られる。「まだ元気だから早い」ではなく、元気なうちしかできない。

パターン③:きょうだいに黙って進める

良かれと思って一人で動いた結果、後から「勝手にやった」と受け取られる。手続きそのものより、共有しなかったことが問題になる。

パターン④:介護の相談とお金の相談を切り離す

介護の見通しが立たないままお金の設計をしても必要額が決まらない。逆に介護だけ相談して資金計画を後回しにすると、いざ施設入居という段階で支払い方法に行き詰まる。この2つはセットで考える必要がある。介護保険で何がカバーされるかは介護保険の解説記事も参考にしてほしい。

よくある質問(認知症とお金の相談先)

Q. まず最初にどこへ相談すればいいですか?

段階によって変わります。介護がすでに始まっている、または近いうちに必要になりそうであれば、お住まいの市区町村の地域包括支援センターが無料の入口です。一方、まだ介護の必要がなく「将来に備えたい」という段階であれば、FPへの相談が向いています。この段階で必要なのは手続きそのものではなく、資産の棚卸しと「何が必要かの見極め」だからです。そのうえで手続きが必要になれば、司法書士や税理士など適切な専門家へおつなぎします。

Q. 銀行の窓口で相談してはいけないのですか?

いけないということはありません。代理人の届出など、その金融機関でしかできない手続きもあります。ただし相談できる範囲はその金融機関の取り扱い商品に限られるため、他社の資産も含めた全体の設計には別の視点が必要になります。

Q. FPに相談すると、保険や商品を勧められませんか?

相談所によって方針は異なります。当相談所は独立系FPとして、必要のない契約をお勧めしない方針でご相談をお受けしています。認知症対策の場面では、新たに何かを契約するより、すでに加入中の保険の代理人指定を確認するなど、費用をかけずにできることのほうが多いのが実情です。

Q. FPと司法書士は、どちらに先に相談すべきですか?

依頼する手続きが決まっているなら司法書士へ直接で構いません。「家族信託を組みたい」「後見を申し立てたい」と明確な場合です。一方、何が必要か分からない段階であれば、先に全体を整理してからのほうが結果的に早く、無駄な費用もかかりにくくなります。

Q. 家族信託をしておけば安心ですか?

万能ではありません。財産の管理・処分については有効ですが、施設入居契約など本人の生活に関する手続き(身上監護)は設計によってカバーできません。また組成には初期費用がかかるため、預金中心の家庭では代理人の届出などで足りる場合もあります。資産の中身に応じて判断が必要です。

Q. 親が相談に同席できない場合でも相談できますか?

ご家族だけでのご相談も可能です。ただし家族信託や任意後見など本人の契約が必要な対策は、最終的にご本人の意思確認が前提になります。まずはご家族で情報を整理し、そのうえでご本人を交えて話す、という二段構えが現実的です。

Q. 費用をかけずにできることはありますか?

金融機関への代理人の届出、加入中の保険の代理人指定の確認、使っていない口座の整理、資産の一覧化。いずれもほぼ無料で、効果は小さくありません。まずここから着手することをお勧めしています。

Q. すでに口座が凍結されてしまいました。相談する意味はありますか?

あります。法定後見の手続きは司法書士・弁護士の領域になりますが、その間の生活費をどう回すか、他の家族の資産や保険で何がカバーできるか、今後いくら必要かの整理は残っています。打てる手が減っているのは事実ですが、ゼロではありません。

※本記事は執筆時点の制度に基づく一般的な情報提供であり、特定の商品・手続きの推奨や、法務・税務の個別判断を行うものではありません。専門家の業務範囲・費用は事務所により異なり、金融機関や保険会社の制度は名称・条件が各社で異なります。成年後見の申し立て・家族信託契約の組成など法律手続きの実行は弁護士・司法書士等の専門領域であり、個別の税額計算や相続税申告は税理士の専門領域です。制度の最新情報は各公的機関の公表資料をご確認ください。

「うちはどこから手をつければいいのか」を、一緒に整理します

どの専門家に何を頼むべきか分からない、という段階でのご相談で構いません。資産の全体像を整理し、介護費用の見通しを立て、今日できることと専門家に依頼すべきことを切り分けるところまでを一緒に進めます。かながわFP相談所は独立系FPとして、家計と資産の全体設計の視点からご相談をお受けしています。法律手続きの実行や相続税の個別計算はお受けできませんが、必要に応じて司法書士・税理士など各専門家におつなぎします。

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かながわFP相談所

この記事を書いた人

かながわFP相談所

AFP2級FP技能士宅地建物取引士二種証券外務員

奈良県橿原市の独立系FP。外資系生保・乗合代理店・不動産会社での実務を経て独立。特定の保険会社・金融機関に属さない中立的な立場から、保険見直し・NISA・住宅ローン・ライフプランニングなど家計全般のご相談に対応。IFAとして資産運用アドバイスも行っています。

奈良・橿原でFPとして活動を始めて8年。2025年に二度の手術を経験し、病室で痛感したことがあります。人は心身が揺らいだ瞬間、どれほど知識があっても正しい判断ができなくなるという現実です。数字の正解より、迷った瞬間に隣で一緒に地図を広げる存在でありたい。

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